夕闇に誘われし絶世の美女は振り向かない

episode 75 ページ35

昨日、小柳とはあれ以来
帰るね、って会話しかしてない

私は別に、ネタとして受け取ってるから
そんなに気にしてなんだけどな…、


集合時間より少し早めに小柳家について
インターフォンを押すと
私だと気づいてなのか、小柳母が出てきた

「あれ、こや…あぁ、翔太は?」

小母「ちょっと熱があるみたいで」

これ持ってってあげて、とお粥を渡されて
小柳の部屋に入ると、小柳はまだ寝てるのか
布団にくるまったままだった

「小柳、おはよう具合どう?」

小「…Aか、あぁ、ちょっと気持ち悪ぃだけ」

目を覚ました小柳が
メガネを取って起き上がった
お粥を手渡すと
カレーがよかったと呟いて食べ始めた

「机で食べなよ、寒いの?」

小「いや、寒くは……ちょっと寒いわ」

「じゃあいいや、机っていう机もないし」

集合時間まであと20分くらいあって
まだまだ余裕もあるし
小柳もそこそこに元気っぽいから
今日は小柳に合わせて撮影をすれば
なんとかなりそう

もし今日無理でも、動画はストックがあるはず
編集は西村にでも頼めば大丈夫だし

小「あー、着替え取ってきて」

「えー? どこにあんの?」

適当にクローゼットから
いつものやつを取り出して小柳に投げる

食欲はあるみたいで、お粥はもうなくなっていた

「あ、着替えしちゃってて、お椀片付けてくる」

小柳が食べ終えたお粥のお椀を持って
小柳母の所に向かった

小母「ありがとうね、大丈夫そう?」

「はい、思ったより元気そうだったので」

そう言ってお椀を手渡して小柳の部屋に戻る
着替えが終わってベッドで携帯をいじっている

「もー、髪くらいまとめなよ」

無言で私に背を向けてきた
…なんだよ縛れってか

……病人だから許してやろう

口には出さないけど、置いてあったゴムで
小柳の髪をいつものみたいにまとめると
新しい冷えピタを貼り直して
私の方に向き直った

小「昨日のは本当にすまん」

「別にいいって、私はネタだと思ってるから」

小「…それもそれで違ぇけど」

「え、違うのかよ、それもそれでヤバいけど」

昨日のがネタじゃないっていうのは
何となくヤバいっていうか
なんとなくても(?)ヤバいっていうか

「ま、まぁ、気にしすぎないでさ」

中村と西村に、
小柳が風邪ひいてるってLINEをしようと
携帯を取り出した



小「ただ、冗談であぁゆうことしねぇから」

「は?」


問いただそうと顔をあげたとき






.




.




唇に柔らかい感触。

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