素直になれなくて、 (ページ40)

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翔｢ごめん｣

ドライヤーの音が止んだリビングに、しっかり響く声。

…そっか。

やっぱり、私が浮かれてただけだったんだ。

でも、良かったかも。

まだ今なら、傷は浅い。大丈夫、まだ引き返せる。

すぐ翔太への想いに蓋をしようと思うのに、ポロポロと溢れてくる涙。

…だめ。ここで泣いたら、重い女だって思われる。

『ごめ、ちょっと、トイレ、』

席を外そうと立ち上がろうとしたその時、ぐっと引っ張られて、そのまま翔太の膝の上に座る形になった。

『え、』

腰に手が回ってきて、ぎゅっと抱きしめられる。

翔｢俺口ベタだから、、勘違いさせてたならごめん。

……ちゃんと好きだから。｣

背中に触れる翔太のほっぺたが一瞬で温かくなったのは、気のせいだろうか。

『……ほんとに？』

翔｢ほんと。あと、さっきかかってきた電話は、ただの飲み会の誘いだと思う。
うちの部の担当秘書だからあんまりキツく断れなかったけど、Aが嫌なら、キッパリ言うから。｣

『…私、、、彼女？』

翔｢うん。彼女。｣

『…もう、戻れないよ？やっぱり好きじゃないとか言われても、翔太のこと嫌いになんかなれないよ？』

翔｢うん。嫌いって言われても、困る。
ずっと俺のそばにいて。｣

また止まらなくなる涙。

くるっと翔太に向きを変えられて向かい合わせになると、

翔｢っふは、ひでぇ顔。｣

口では相変わらずキツイこと言ってくるくせに、掬うようにキスしてきた翔太の笑顔は、すごく甘かった。