シゲアキさんの嫉妬 (ページ11)

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Aside

あの日の夕方。

私は夕食の材料を買うために
銀行でお金をおろした。

その直後だった。

「きゃっ…！」

本当に一瞬の出来事。

後ろから来た何者かに、
肩にかけていたバッグを引っ張られ、
バランスを崩した私はコンクリートの上に
前のめりの形で転んでしまった。

前を見ると私のバッグを盗り、逃げ去る自転車の姿。

「その人泥棒です！捕まえて！」

たぶん、そう叫んでいたと思う。

その時。

こちらへ向かって歩いていた男性が
向かってくるその自転車を蹴り飛ばした。

倒れる自転車。

自転車から投げ出されてもなお
私のバッグを抱え逃げようとする男に
その男性から一発の拳が飛ぶ。

「うっ…」

呻き声を上げ倒れた隙に
男性は私のバッグを拾い上げ
こちらへ向かって来た。

「これ。はい」

気をつけてくださいね、そう言って
砂埃を払って鞄を手渡してくれた。

「すいません、ありがとうございます」

地面に座ったままで答える私に

「立てますか？」

目の前に差し出された大きな手。

「あ…ありがとうございます、」

私は男性の手を借り立ち上がろうとするも

「痛っ…」

どうやら足首を捻ったみたい。

「痛みますか？」

「すみません、捻ってしまったみたいで…」

男性は辺りを見回すと

「うち、すぐそこですから」

「え？」

「軽い手当て程度ですけどさせてください」

「そんな…悪いです、」

「気にしないで」

男性はそう笑顔で言うと
私を負ぶい始めた。

「ちょっ、大丈夫です、私重いですし」

さすがにこの歳になって初対面の男性に負ぶわれるなんて恥ずかしすぎる。

でも男性は強引だった。

なんとか降りようとする私に男性は肩越しに

「暴れると、…また怪我するよ？」

そう言い、ふっと笑って
そのまま私を背中に乗せた。

至近距離での突然のタメ口。
不覚にもドキッとする。

私はそのまま男性の家へと
連れて行かれてしまった。