弍──08 ページ18
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消毒液が沁みる。嗚呼、痛い。これだから医務室は嫌だったんだ。
治療している森鴎外は、顰めっ面で一心に消毒液に浸した脱脂綿を傷口に当てている。
「にしてもアンタ、何であんな真似したんだよ。自分が痛いだけだし、目立つだろ」
近くの椅子に腰を下ろして、菊池が問うてくる。
何で、か。何でだろうな。咄嗟に殴ってただけだから、理由なんて分からないんだけどな。
でも、分からない、で済む雰囲気じゃねえか、此れは。
ただ、嗚呼、きっと……今も昔も理由なんて、一つしか無いんだろうな。
『別に……この腕を無くしたいだけだ』
「腕を？ また、何で」
『要らねえから。こんなモンがあるから……書ける腕があるから、書かなきゃいけない。頭があるから、目があるから、耳があるから、命があるから』
「おい、アンタ」
『何で書かなきゃいけないんだ。俺は書きたい時に自由に書いて満足だったのに。世に出すつもりなんて無かったのに。自分の話が駄目だなんて思ったこと無かったのに、アイツがああ言うから、駄目なんじゃないかって思っちまった。何で、何で俺は、俺は』
「鞘継鳴人！！」
一度話し出したら止まらなくて、陰った精神も相まって言葉を垂れ流していると、大声で菊池が俺を呼んで、バチンと頬を叩いた。
きょとんとして俺が見つめ返す。菊池は、何かを恐れている様な、恐ろしいものを思い返している様な表情で、俺を見つめていた。
「もう良い。今は、書く必要なんて無い。思い詰めなくて良いんだ」
書く必要が無い？ 知ってるよ。
でも、俺は、何時の世でも、「鞘継鳴人」なんだよ。
『……でも、俺は文豪として転生した。転生、させられた。なら、俺は未だ「作家」で、「鞘継鳴人」で、望まざる俺のままだ』
如何すれば、俺は俺でいられるんだろうな？
菊池に問うたけど、其れに答えは返ってこなかった。
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狐狸 - 面白いです！もしできたらもう一度更新していただけないでしょうか。 (2020年8月11日 15時) (
レス) id: e51262cf91 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ@��(プロフ) - 夕莉さん» こちらもその旨の注意書きを忘れていてすみませんでした。お褒め頂きありがとうございます！ (2020年1月26日 18時) (レス) id: 5ad838b917 (このIDを非表示/違反報告)
夕莉(プロフ) - 名前が違っていたので確認目的でコメントさせて頂きました。誤解を招く様な書き方で申し訳ありません。pixivで初めて読んだ時から好きな作品だったので、素敵な作品を有難う御座います。 (2020年1月26日 17時) (レス) id: d91c2ac204 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ@��(プロフ) - 夕莉さん» 東雲祀という名前でしています。似たような話をpixivに投稿して、そちらを占ツク用に変えた話なので、パクリではありません。 (2020年1月26日 15時) (レス) id: 5ad838b917 (このIDを非表示/違反報告)
夕莉(プロフ) - 突然失礼します。pixivでも作品投稿しておられますか？ (2020年1月26日 15時) (レス) id: d91c2ac204 (このIDを非表示/違反報告)
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