弍──03 ページ12
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順番が来た。今日はきつねうどんだ。出汁の良い匂いがするな。
盆に乗せて、ついでに珈琲も淹れて持っていく。席は適当な所で良いか。
隅の方に座ったら、その後に川端と横光もやって来て俺の向かいに座った。
あ、一緒に食うんだな。食堂に来るだけだと思ってた。言わないけど。
割り箸を割って手を合わせる。
うどんの麺はしっかりコシがあってもちもちしてる。やっぱりうどんはこうでないとな。出汁も関東風じゃなくて良かった。関東には馴染みが無いからな。
川端と横光は黙々と食べながら、時々視線を合わせている。もしかして、あれで会話が成立してるのか？ どんな天才だよ。
あ、そうだ。丁度良いから聞いておこう。
『なあ、俺の名前を言ったら、お前ら2人とも遺作五篇とか言ってたけど、それ何だ？』
「嗚呼、貴方の死後のことですから、知らないのも無理はないでしょう。《遺作五篇》は、貴方の死の時机上に置かれていた5篇の作品の総称です」
『嗚呼……』
そんな大層な名称つけてまで広められたのか、あれらは。発表されるのは分かってたけど、此処までやられると気分が悪いな。
横光は反応の薄い俺に何を思ったのやら、自分も読んだことがあると主張する。
「手前も、前に『氷泉』を自費で買って読んだことがあります。序章から終章までの流れが美しかった。文章も」
『あのさ』
弁明になってないんだよ、それは。
『俺の前で俺の本を褒めるな。先生と呼ぶな。文豪だと思うな。それが出来ないなら俺はこの腕を落として死ぬ。分かった？』
横光はぐっと黙りこくって、川端は琥珀色の目を俺に向けて、暫くした後に小さく頷いた。
此処の奴らは皆聞き分けが良いな。楽で良い。
きつねうどんも完食して、珈琲を飲み干してから、片付けに行こうと立ち上がる。横光が声を掛けてくる。
「あの、すみませんでした。無遠慮にあのようなこと……」
『いや、分かってくれたなら良いんだ。……ただ、そうだな……』
今後俺のような奴が他にいないとも限らないし、忠告はしといてやるか。
『誰もがお前らみたいに作家になりたくてなってる訳じゃない。少なくとも、俺はなりたくなかった。それは覚えといた方が良いかな』
「……はい」
返事を聞いてから、手を振って其処から離れる。後ろを見る気にはならなかった。
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狐狸 - 面白いです！もしできたらもう一度更新していただけないでしょうか。 (2020年8月11日 15時) (
レス) id: e51262cf91 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ@��(プロフ) - 夕莉さん» こちらもその旨の注意書きを忘れていてすみませんでした。お褒め頂きありがとうございます！ (2020年1月26日 18時) (レス) id: 5ad838b917 (このIDを非表示/違反報告)
夕莉(プロフ) - 名前が違っていたので確認目的でコメントさせて頂きました。誤解を招く様な書き方で申し訳ありません。pixivで初めて読んだ時から好きな作品だったので、素敵な作品を有難う御座います。 (2020年1月26日 17時) (レス) id: d91c2ac204 (このIDを非表示/違反報告)
アカツキ@��(プロフ) - 夕莉さん» 東雲祀という名前でしています。似たような話をpixivに投稿して、そちらを占ツク用に変えた話なので、パクリではありません。 (2020年1月26日 15時) (レス) id: 5ad838b917 (このIDを非表示/違反報告)
夕莉(プロフ) - 突然失礼します。pixivでも作品投稿しておられますか？ (2020年1月26日 15時) (レス) id: d91c2ac204 (このIDを非表示/違反報告)
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