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A side
「あ、自己紹介がまだでしたね。僕は二宮和也です。さっきも言った通り、この山風総合病院の呼吸器内科のエースですよ。」
2回も自分からエースだなんて言うものだから、思わず笑ってしまった。そんな私を見て二宮先生は
「ふふ、良かった。緊張ほぐれました？」
と少し笑いを含んだ声で言ってきた。今までのやりとりは私の緊張をほぐすためのものだったと思うと、なんだか恥ずかしいような嬉しいような不思議な気持ちになった。
「それじゃ、嫌なことはさっさと終わらせましょ？あなたの名前も早く聞きたいですし、ね？」
優しい言い方ではあったが、急に本題に入られて私の身体はカチコチになった。覚悟を決めた筈なのにどうにも恐怖が勝ってしまう。病院は昔から苦手だ。
そんなことを考えているうちにいつのまにか二宮先生は私の頭の方に歩み寄り私の喉に入っているであろうチューブに手をかけていた。
「すぐに終わらせてあげますから、5秒だけ頑張りましょ？大丈夫ですよ、なんといっても私は"エース"ですからね。」
3回目のエース宣言は、さっきと違って本当に私の心から不安を取り除いてくれた。
たった5秒、頑張れば良い。二宮先生なら信じられる。
なんの根拠も無いけれど、そう思っている自分がいた。
和「じゃあ抜きますよ？いーーち、にーーい、」
喉から伝わるリアルに抜けていくチューブの感覚。っっっ！痛い！痛い！そう叫んでしまいたいのに声が出せなかった。
和「もうちょっとですよ！さーーん、しーーい、」
もう涙をこらえることが出来なかった。意識している訳では無いのに瞳から止まることなく涙が溢れてくる。
私にとって二宮先生がカウントする5秒間は1時間くらいにも感じられた。
和「ラストですよ、頑張れ！ごーーーおっ！」
声の道を塞いでいた管から開放された瞬間、私は、ひたすら喉が張り裂けそうな程泣いた。
「ふぇっ、痛かった、痛かったよぉーー」
「あーもう泣かないの。可愛いお顔が台無しでしょ？」
「ﾋｯｸ、ふぇーん！痛かったっ、ﾋｯｸ、寒かったっふぇ、怖かったのぉっﾋｯｸﾋｯｸ」
最初は本当に管を抜いた痛みで泣いていたのにだんだん今まで受けた暴力や家を追い出されたこと、電柱の傍にしゃがみこんでいた事などが鮮明に甦り、涙が止まらなくなってしまった。
二宮先生はそんな私をずっと大丈夫、大丈夫だからと抱きしめてくれていた。
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ショコラ(プロフ) - おもち。さん» ご指摘ありがとうございます！呼吸器内科が正しいです(>_<)訂正しておきました。申し訳ないです。 (2020年8月19日 5時) (
レス) id: 9293f0f13d (このIDを非表示/違反報告)
おもち。(プロフ) - 初めて拝見しました！面白いです！一点気になったのですが、設定では二宮先生は呼吸器内科と書いてありますが、必死の救命での物語上では循内になっています。細かいこと申し訳ありません。 (2020年8月18日 23時) (レス) id: 2888f7ab62 (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ(プロフ) - ナマケモノさん» 了解です(^^ゞ詳しくありがとうございます！もう少し後の方で書かせて貰いたいので順番が前後するかもしれませんがご了承くださいm(_ _"m) (2020年8月17日 17時) (レス) id: 7a94125d06 (このIDを非表示/違反報告)
ナマケモノ - 過程ですが、主人公ちゃんの携帯に、お母さんから電話がかかってきて「戻って来なさい」と言われて、「迷惑だから」という気持ちと「家に帰らなきゃ」という気持ちが混ざって出ていってしまうって感じでお願いします！ (2020年8月17日 16時) (レス) id: c08bcbfb9a (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ(プロフ) - むしろ細かく書いてくださるとこちらも書きやすいので要望が多いのは大歓迎ですよ！重いとかはそこまで気にしないタイプなのでご心配なさらず(*^^*)過程も特に希望がなければ無いで大丈夫です。 (2020年8月16日 18時) (レス) id: 7a94125d06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ショコラ | 作成日時：2020年8月7日 18時
