Happy Everyday Forever

#5　西岡剛 ページ5

#5 西岡剛





シーズンが始まってファーム調整が続く中、Aちゃんが俺の前に現れた。

「皆さんにお断りを入れてきました」

真っすぐな眼やけど、うつむき加減の顔。

「…まだ、間に合いますかね？」

ちょっと心配そうで、口調も伺い気味。

西「もちろん」

だから顔を上げさせて、唇に触れるだけのキスをする。

西「これからもよろしく」



◆◇◆



Aちゃんは、篤史さん家から俺ん家に引っ越し。
仕事もセーブして、俺をサポートしてくれてる。

西「盛大に広げてんなー」
「箱に入れる前に、確認しとこーって思って」
西「見てもいい？」
「どうぞー」

リビングのテーブルを占拠する資料の中から、手前にあったファイルを見た。
選手個人のデータみたいで、背番号順に見出し付箋も張ってる。
やっぱ、自分がどんな風に書かれてんのか気になるから、一発目にめくってみた。

西「おぉ…」

俺の顔写真、出身地・経歴から始まって、クセとか好物とかいろんなことが、見開き1ページにびっしり書かれてる。

西「自分で作ったん？」
「うん。先輩らは頭に叩き込んでたけど、私はそんなんできひんから」
西「全員、書いてんの？」
「支配下登録だけね。育成まではムリやったわ」

糸原・大山はともかく、浜地も福永もそこそこ書いてるから、ホンマにこの努力はすごいわ。

西「てか、コレやってんの？」

自分の2ページのうち1ページは、盗撮写真を切り抜いたやつに線引いて、怪我の名称を書いてる。
そのページを見せると、Aちゃんが笑った。

「あぁ！『西岡剛どこ怪我してんだよメモ』ね。そりゃそうやん、パッと見で分かるから便利やもん」

実践復帰が知れた瞬間、新聞がコレと同じのを出してきて『こんだけ怪我してたんや』って、独りでウケとったからなぁ…めっちゃ悲しいけど。

「今回の肋骨神経痛は肋骨カテゴリーやから、あとは右手と右脚と左わき腹をやってくれたら、コンプリートできんねんけどなぁ」

俺が持ってたファイルもAちゃんが持ってたのもテーブルに置いて、笑ってるAちゃんを抱き寄せる。

西「そんなんからかう娘には、お仕置きが必要やなぁ」
「い、いや、ちょ…！」

またファームに来てしまったけど、今はホンマAちゃんに支えられてる。

西「こちょこちょとイチャイチャ、どっちがいい？」
「りょ、両方イヤなんですけど…」
西「じゃあ、イチャイチャにする！」
「ま、まだお昼！」
西「関係ないもーん」

あぁ、毎日が幸せやわ。

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