#32 新井良太 ページ3
#32 新井良太
今シーズンで、引退することにした。
シーズン中盤に付き合い始めた彼女には、「引退する」の一言しか言っとらん。
それでも彼女は、最後までわしを支えてくれた。
鳥「マジでやるのか?」
良「やる」
西「俺、恥ずかしくて絶対できひんわ」
じゃけぇ今日――ファン感謝祭の日に、彼女に想いを告げる。
プログラムの中盤に、突如としてグラウンドのど真ん中に置かれたスタンドマイクが、その合図。
運営側にも監督・選手・スタッフにもこのこたぁ伝えてあって、知らんなぁファンと彼女だけ。
『では、ここでファンの皆さまにお知らせがあるということで、新井選手!お願いします!』
みんなに背中を叩かれて送り出されて、マイクの前に立った。
良「ご存知の通り、私は今シーズンで引退することを決意しました」
スタンドの声を見計らいつつ、声を出す。
良「ファンの皆さんに支えられて、とても幸せな野球人生でした。そして、皆さんにお知らせしたいことがあります」
スタッフの間に隠れとる彼女に向かって、手を伸ばした。
彼女は、何が起こっとるのか分からんから、周りに助けを求めとる。
その周りが彼女を押して、彼女はおどおどしながら、わしの隣に来た。
良「…私は、Aさんとお付き合いしています」
不穏な空気ぃ漂わせていたスタンドが明るうなって、拍手も巻き起こった。
緊張しとる彼女の肩に、そっと触れて笑いかける。
良「そして今日、この場所で、Aさんに伝えたいことがあります」
呼吸を1つ置いて、彼女を見つめる。
良「野球人生を最後まで全うできたのは、笑顔で支えてくれたあなたのおかげだ。ありがとう。これからどうなるかは分からんが、いつまでも支えて続けてほしい。だから…」
彼女の前に膝をついて、ポケットからケースを出して、ふたを開けた。
良「Aさん。わしと結婚してください」
「はい…!」
大粒の涙を流す彼女の左手の薬指に、この日のために用意した指輪をはめる。
すると、彼女は泣きじゃくって、手で顔を覆うてしもうた。
愛おしくなって、彼女を抱き締める。
良「一生、幸せにするからな!」
「「「「「「おめでとー!」」」」」」
――ばしゃぁっ!――
チームメイトからは、サヨナラ並みの手荒い祝福。
「めっちゃ冷たい!」
スタンドからは大きな声の祝福。
球場全体が祝ってくれとって、幸せ以外の感情はない。
良「お前らやめんか!風邪ひくわ!」
野球人生、最高の締めくくりだ。
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さや - はじめまして。おすすめ作品に出て来て、読んでみました! まだまだ読破には遠いのですが、楽しく読ませて貰ってます! (2018年9月12日 18時) (レス) id: e1494134c3 (このIDを非表示/違反報告)
Quintet(プロフ) - さかきさん» はじめまして、こんばんは!お付き合いいただいて、ありがとうございます。まさかこの作品で好きになっていただけるとは…嬉しい限りです!短編集も細々と頑張りますので、よければリクエストしてくださいね!これからも、よろしくお願いいたします! (2017年10月21日 18時) (レス) id: 06dcf55897 (このIDを非表示/違反報告)
さかき(プロフ) - はじめまして!完結おめでとうございます!ドラゴンズファンの私ですが、Happy Everydayのおかげで、タイガースのことも大好きになりました!!短編集も楽しみにしております(´▽`*) (2017年10月20日 21時) (レス) id: 9dcd9df020 (このIDを非表示/違反報告)
Quintet(プロフ) - ご声援、ありがとうございます!短編集も頑張ります!(o´∀`)o (2017年10月19日 17時) (レス) id: 2b0fd95d19 (このIDを非表示/違反報告)
雛@虎ガール(プロフ) - 完結おめでとうございます!連載お疲れさまでした!いつまでも、応援してます!短編集も更新頑張って下さい! (2017年10月18日 22時) (レス) id: 940eb26264 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Quintet | 作成日時:2017年10月18日 19時