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君を奪いたいby鳥谷 ページ43

鳥「何もない」

――ワケがない。
Aの顔の横に両手を、脚の間に左膝を置いて、俺はAが動けないようにしてる。

「逆光で顔が見えません」

なのに、Aは警戒心すら出していない。

鳥「俺は見える」
「そりゃあそうでしょう」

ボールで遊んでただけなのに、額に汗が出てる。
濡れた前髪が、顔に張り付いて…ん?

鳥「もしかして、前髪、切った?」
「そうなんですよ。昨日、自分で切ったんです」

前髪を指で挟んで、見せてきた。
美容師のようにキレイではないが、下手でもない、そこそこな感じ。
ただ、映画とかで見るような昔の貴族の姫っぽい、今で言う《ぱっつん》さは否めない。

「どうですか?」

挟んでいた髪を下ろしたら、今度はベストポジションに整えて見せてくる。

鳥「俺は前の方が好きだな。《ぱっつん》は似合わない」
「ですよねー。さすがに今回は失敗しました」

Aは苦笑いをして、また前髪を挟む。
俺はその手を払いのけて、前髪を一気に上げた。

鳥「オールバックにはしないのか?」

額を露わにすれば少し幼くなるが、《ぱっつん》よりは似合ってる。

「小さいときにいっぱいしましたから、もうしません」

今度はAが、俺の手を払おうとする。
だから、その手を掴んで、地面に抑えつけた。

「あのー、いつになったら、退いてくれます?」

こんな状況なのに、Aは笑ってる。
汗も、汗で濡れた髪も、柔らかくて白い肌も、紅い唇も…。
何もかもが気分を高揚させ、その気にさせる。
まるで俺を誘ってる。
指で頬をなぞると、くすぐったそうにする。

「もー。早く退いてくださいよ」
鳥「…じゃあ、退く」

キスしようとして、本能的に寄せていた顔を外して立ち上がると、Aは手を伸ばして暗に『起せ』と言ってる。
だから、揺れて催促する手を握り、引っ張った。
Aの身体が半分起き上がったと思ったら、膝を曲げてそのまま立ち上がろうとする。
予想していなかっただけに、引きの力が強い。
俺が持って行かれそうになったが、力を入れ直して一気に引き上げた。

「ありがとうございます」


――ふらっ――


そして手を離した瞬間、Aの身体が後ろに戻りかけた。

鳥「おいっ!」

慌てて腕を掴んで、俺の方に引き寄せる。
その上、身体は脚から崩れそうになってた。
背中に腕を回して、身体を支える。

鳥「大丈夫か?!」

支えたのは良いが、身体が密着してる。
切り替えたはずの気持ちが、またふつふつと上がってきた。

余裕がなくなるby鳥谷→←隙あらば…by鳥谷



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Quintet(プロフ) - ゆかさん» コメント、ありがとうございます。あちゃー、私のルーティンがバレてしまいましたね(笑)。あともう半日、あと数時間を過ごす一息になればと思っています。これからも、よろしくお願いします。 (2016年10月14日 16時) (レス) id: 7f540aaaaf (このIDを非表示/違反報告)
ゆか - 毎日更新されるのが楽しみです! 毎日4時過ぎにこのお話更新されているか見てしまいます。笑 これからの楽しみにしています! (2016年10月12日 15時) (レス) id: c3eab76729 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Quintet | 作成日時:2016年10月4日 15時

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