Happy Everyday 2nd.

トレーニングルームby私 ページ36

試合が終われば、私は日課のお出迎え。
皆さん笑顔やけど、鳥谷さんだけは浮かない顔。
こないだは、笑ってたのになぁ…。

能「A、おいで」

能見さんとハイタッチすると、そのまま廊下の片隅に誘導された。

「トリのことやねんけど…」

もしかして、何かあったん？
最近の鳥谷さん、不安定やからなぁ。

能「『アホって言われた』って言うて、落ち込んでんねん」
「えぇ？！」

確かに、ネタが消えたから言ったけど…。
そんなん、勢いで言っただけやん！

能「ホンマ洒落にならんから、ちょっと話してくれへん？」
「も、もちろんです！」
能「じゃあ、頼んだわ」

能見さんは私の肩を叩いて、ロッカールームに入って入った。



◆◇◆



時間を見計らって、トレーニングルームの窓を覗くと、鳥谷さんの背中が見えた。
ノックして入ると、鳥谷さんが意外な顔をする。

「お邪魔しますね」
鳥「ああ」

それっきり、鳥谷さんは黙々と身体を動かして、ケアに専念してる。
来たのはいいけど、どうやって話しかけるよ？
さすがにこの空気は、気まず過ぎるわ。

鳥「昼間のことなんだが、いいか？」

ストレッチをやめた鳥谷さんは、いったん立って、私の隣にまた座る。

鳥「あの時、ブログのネタ探ししてたんだろ？」
「ええ、まぁ…」
鳥「その…邪魔してごめんな」
「私の方こそ、ごめんなさい。アホとか言っちゃって…」

鳥谷さんが手を出してきた。

鳥「これで仲直りだな」
「そうですね」

握り返すと、鳥谷さんが笑った！

「鳥谷さん、その顔です！」
鳥「は？」
「前にも言ったでしょ？笑ってないと、意味がないって！」
鳥「あぁ、そういえば…」

思い出し方が、めっちゃ遠い！
能見さんの言う通り、ホンマ洒落にならんわ。

「もう、鳥谷さん！しっかりしてください！」
鳥「ちょ…何だよ！」

急に叫んだから、鳥谷さんが耳を抑えた。
うん、ごめん。
やけど、ここで折れたらあかんねん！
私は、鳥谷さんの前に仁王立ちする。

「弱音を吐きたい時は、吐いていいんです。逃げたい時は、逃げていいんです。もがき苦しんで、辛くなったら、いつでも受け皿になります。だから、独りで抱え込まないでください。皆さんを頼ってください」

んで、あの時と同じように拳を出した。
…のに、鳥谷さんは応えてくれない。
セリフも決まったのに、独りでこんなんやってめっちゃ恥ずかしいやん。

鳥「分かった、約束する」

そう思って数十秒。
ようやく、鳥谷さんが拳を合わせてくれた。

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