北の海の魔女短編＆番外編Ⅱ 【ONE PIECE】 (ページ32)

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＊ページ32

街の外れの、小さな広場。
歩く人もまばらで、誰もAのことを気にとめていないようだ。

『さっきは助けてくれてありがとうございました。』

「いえ、いいんです。...それより、あなた...、魔女...ですか？」

『...はぁ、』

どこか探るような目。
そりゃそうだ、今や手配書は世界中に出回っているんだ。

『はい。でも、私はここに錬金術の魔法研究で来ただけで、別に問題を起こすつもりは...、』

「わぁ！すごい！！」

Aの言葉を遮って、ジャンヌは目を輝かせながら、Aの手を取った。

「私、子供の頃から憧れていたんです！絵本の魔女！実在するって知って嬉しくて...！さっき、空から落ちて来たのに無傷だったし、手配書で見た人と同じだし...！そうじゃないかなって思って！」

『お、おぉ...、そっか...、』

まさかのファン。
Aも、魔女のファンに会うのは初めてだった。
どう返していいか分からず、手を握られたまま固まる。

「...そうだ、ルフィ、知ってますよね？彼らも今、この島にいるんです。」

『え？！そうなの？...はーん、ナミが宝石でも狙ってるの？この島、鉱石の原産地で有名だもんね。』

「それは、そうなんですけど...、彼らは、空中監獄にあるって噂されてたお宝を狙ってたみたいで...。」

『ん？？空中監獄？』

「空に浮く監獄です。ご存知ありませんか？」

どうやら本当に、レイリー達が来た頃とは様変わりしているようだ。

『...私は、ここは鉱石産業で栄える平和な島って聞いたよ。ダイナ岩の原産地でもあるけど、安全な採掘方法と保管方法が、ちゃんと代々伝わってるって。』

「...10年ほど前の、話です。」

ジャンヌが語ったのは、自らの母を失った戦争の話だった。
平和な日々が続いたある日、ダイナ岩を狙った海賊の艦隊が島へ押し寄せた。
海軍の介入により何とか沈静化したが、唯一の犠牲者がジャンヌの母で、当時の島のリーダーだった、と。

「最近になって兄さんも島に戻って、監獄なんて作って...。島の住民は、海軍派と反海軍派で別れていがみ合うようになって...。」

『...そうだったの...。』

「今は、鉱石採掘地の鉱山も渓谷も海軍の管理下にあります。指名手配中のあなたが近付くのは危険かと...。」

ジャンヌが、辛そうな表情を浮かべる。

『...。そう、わかった。でも、せっかくだし観光してから帰るよ。』

ルフィ達によろしくね。

そう伝えて、Aはジャンヌと別れた。