最終章 シンデレラ10 ページ32
「思い出した」
「……そう」
お母さんは少しだけ微笑んでいた。それは優しいほほえみではなく狂おしい微笑み。
そして、また私に向かって語りかけてくる。
「そして、その愛する人を殺したのは誰？」
その微笑みと同時に記憶がまた、映像が頭の中で流れた。
血が出ていて冷たくなっていて目が虚ろでおもちゃなハンス。
映像を見るのが嫌で、目をつぶっても一向に消えない。
死んでいる死んでいる。ハンスは何もしゃべらない。ハンスは口を開けているだけ。
ぽろり、と雫が目から溢れた。
それは悲しみが混じっただけの涙ではなく、憎しみと後悔が混じった涙。
そうだ、なぜこの人を殺そうと思っていたのか。しっかりと確認できた。
――私はこいつに愛する人を殺された。自分の命と大切なくらいの人を。
それを、私は自分を美しくしようとして忘れようとしたのだ。
そっちのほうが、よっぽど醜いじゃないの。
「ふふふ……」
笑いがこみあげてきた。
なぜなら、滑稽だったから。こんなくだらないことを考えていた自分が本当に馬鹿みたいだったから。
それを、私の大嫌いな人……「お母さん」に教えてもらったから。
「皮肉ね……貴方にそんな事言われるだなんて」
「あら、随分と生意気な口をたたくようになったわね」
でも、それで良いのよとお母さんは言った。
私はこいつに復讐するために生きているんだ。
そう、これで良い。今私がしていることは間違っていない。
――これが私の生きるための「柱」なんだ。
そう、決意した瞬間だった。
「じゃあ、もういいわね」
そのお母さんの言葉と同時に、私の意識は元いた世界……現実へと引き込まれていった。
だんだんと消えていく闇とお母さん。手を伸ばしてみたけれどその手はお母さんに届かなかった。
「おかあさ……」
もう少しだけ、貴方と話したい。
そう言おうとしたけれど、その言葉はあっけなく現実へと飲み込まれていき――
気が付いたら私はベッドの上で寝っ転がっていた。
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弥生2nd(プロフ) - 更新待ってます！狂気系が大好きなのでとても面白かったです！ (2020年4月12日 16時) (
レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 読ませていただきました。更新を待っています。永遠に… (2018年4月7日 1時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
狂桜花 - 一番最初から読ませていただきました(*^^*)物凄く緊張感があって背中がゾクゾクしました(笑)最終回楽しみにしています！更新頑張って下さい！あと『償いアリス』に一票です！ (2015年12月12日 9時) (レス) id: afbc5a8e6c (このIDを非表示/違反報告)
子狐。 - 償いアリスに一票です。最終回楽しみにしています。 (2015年10月20日 16時) (レス) id: 2b9fb3470a (このIDを非表示/違反報告)
真庭朱雀(プロフ) - 『償いアリス』に一票です！理由は今回の狂気童話で小豆川さんの書くホラーのファンになってもっと読みたいと思ったからです！最終回楽しみにしてます！ (2015年10月12日 19時) (携帯から) (レス) id: 9a9ad35bf8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小豆川 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/112121/
作成日時：2015年8月1日 21時
