episode4 眠り姫3 ページ11
「ハンス？なんかおかしいよ？どうしたの？」
白雪様は心配したような表情で俺の顔を見る。
体調でも悪いの？と俺の調子を自分の事のように心配している。優しい白雪様だ。
それは、この目の前の壁がなければの話だが。
その時、白雪様からはとんでもない言葉が口を飛び出した。
「まあ、ちょっとハンスにかけた眠り魔法が強すぎたかな？だから体調が悪いのかも……ごめんねハンス。ただ、こうでもしないときっとハンスは逃げちゃうと思うから」
逃げちゃうと思うから？
なにを言っているのだろうか白雪様は。
「ただ、悪気は無かったんだよ。ごめんね。だってハンスが逃げちゃうのは嫌だし……だからちゃんと壁も作っておいたんだよ！だからハンスはここでくらして！」
その言葉を聞いたとき、背筋が凍った――――
俺の頭の中で警戒信号が最大限の音で鳴り響く。
ここでくらして。その言葉の意味を理解してしまった。
――白雪様は俺をここに閉じ込めるつもりなんじゃないだろうか。
もうあの小屋には戻れない。
白雪様は狂っている。
あの女と同じように、狂っているんだ。
「ハンスなら外に出なくても私がいれば良いよね？私も、外に出なくてもハンスがいればいいからさ」
嬉しそうにふふふ、小さく笑い声をあげている。
俺の意識はもうろうとしていて、これが現実だとわからなくなってきた。
これは本当に白雪様？
違う。
今までの白雪様が間違っていたんだ。
本性はこっち。
これが、真実の白雪様なんだ。
――俺は説明されなくても、なんとなくそう悟っていた。
「はは……は」
思わず笑い声がこみあげてくる。
白雪様は俺を見ながら嬉しそうに顔を赤くしながら微笑んでいる。
俺はさらに笑い声を上げていた。
そして、目からは涙が出てきた。
なぜ涙が出てくるのだろうか？
理由なんてわからなくなっていた。
この時点で、俺も狂い始めてきていたからだ。
「愛してるよ。ハンス」
ニッコリと笑った笑顔は、今までで一番美しく妖艶で、そして今までで一番恐ろしかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弥生2nd(プロフ) - 更新待ってます！狂気系が大好きなのでとても面白かったです！ (2020年4月12日 16時) (
レス) id: c09bebec20 (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 読ませていただきました。更新を待っています。永遠に… (2018年4月7日 1時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
狂桜花 - 一番最初から読ませていただきました(*^^*)物凄く緊張感があって背中がゾクゾクしました(笑)最終回楽しみにしています！更新頑張って下さい！あと『償いアリス』に一票です！ (2015年12月12日 9時) (レス) id: afbc5a8e6c (このIDを非表示/違反報告)
子狐。 - 償いアリスに一票です。最終回楽しみにしています。 (2015年10月20日 16時) (レス) id: 2b9fb3470a (このIDを非表示/違反報告)
真庭朱雀(プロフ) - 『償いアリス』に一票です！理由は今回の狂気童話で小豆川さんの書くホラーのファンになってもっと読みたいと思ったからです！最終回楽しみにしてます！ (2015年10月12日 19時) (携帯から) (レス) id: 9a9ad35bf8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小豆川 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/112121/
作成日時：2015年8月1日 21時
