ハナノゲンソウ

ゲンソウ８ ページ8

古びた図書室の中で俺達は本を漁っていた。
ところどころに蜘蛛の巣があり、周りは腐った木の匂いが鼻にツンとくる。

「巧ー？見つかったか―？」
「わかんねーなー」

巧はそう言いながらゴソゴソと本を探している。
俺も巧のように本を探しているが、これもまた奇妙な本ばっかりが出てくるのだ。
さっきなんか、トカゲがつぶれたのを栞に使っているような気味の悪い本が出てきた 内容も気持ち悪かったが。

「んー……」
「どこだろーなー」

そう言いながら巧は本を漁る。
俺は手に取っていた本を棚へとしまおうとしたその時。

「あっ……」

ドサドサッ！！

しまった、そう思って俺は頭をかく。
俺は本をしまう時、体がぶつかってしまい棚から本が５、６冊落ちてしまったのだ。

「めんどくせ……」
「落としてやんのー」

巧は俺にそう言ってケラケラと笑ってきた。
俺は、うるせーよ！と言い返し一つの本を手に取った。

「……ん？」
「なんだよ？」

手に取った本の触り心地がどの本よりも古く感じる。
きっとこれはもっと昔の和紙だろうか、この本は本屋に売ったらかなりの値段で売れるんじゃないか……そんな事を思いながら、右手に持っている本の表紙を見た。

本の表紙を見た刹那、俺は「あああッ!!」と声を上げ、ものすごい速さでその場に立ち上がった。

「うわっ!! なんだよいきなり?」
「た、た、た、巧!!」

俺は息を荒くしながら巧に拾った本の表紙を見せた。
見せた途端、巧も俺のように「おおお!!」と歓喜の声を上げながら俺の目の前へと立った。

「なあ…!!これって…!!」
「だよな!!『花ノ幻想』!!」

そう、表紙を見ると太く墨で書かれた四文字………

―――それは、どこからどう見ても「花ノ幻想」と見事に書かれていた。

「やっと見つかった!!」
「だろ!!俺が言った通り図書室にあっただろ!!」

そう言って、巧はいつもよりもまぶしい笑顔を向けた。
俺はそんな巧の言葉に笑顔で「ああ!!」と答えた。
本を握っている手が熱い 俺は嬉しさに興奮しながら「花ノ幻想」の文字を見つめる。

「…それじゃあ開けるか!!」
「うん!!」

ワクワクとした目で見守りながら、ゆっくりと本の１ページ目を開いた―――――

ゲンソウ９→←ゲンソウ７

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す