ハナノゲンソウ

ゲンソウ25 ページ25

「あれ……お前、帰り道こっちだったっけ？」

俺はあまりしゃべったことの無い大附に困惑しながらも喋りかけた。

「いや、俺はスタバに行くだけで、帰り道はこっちじゃない。 ……といっても、俺は好きでスタバに行くんじゃないけどな」
「たまには良いじゃないですか先輩！」

そう元気いっぱいにショートカットの女の子は大附に言った。この子は大附と同じ部の後輩だろうか？

「でもこの間も……もう良いや、面倒くさくなってきた」

こいつは大附優樹。俺と同じクラスの奴だが、あまりしゃべったことが無い奴だ。
……いや、正確に言うとコイツが友達と一緒にいたり、人と喋っているのもあんまり見たことが無い。失礼だが、友達がいないという事だろうか。

そんな優樹がなぜ、こんな可愛らしい女の子と仲良くしているのかと疑問を抱くが、それを聞いたら流石に相手も嫌な気持ちしかしないだろうと思い、問いかけるのはやめておこうと思った。

「へー！こんな可愛い子と歩いてるって……付き合ってんのか！？」
「え……いやいや！！そんなんじゃねーって！」

大附は、顔を少し赤に染めながら巧の言葉を否定した。これはもしかして……大附はこの女の子に気があるのかもしれない。

「あっ、申し遅れました先輩方。私は風花っていいます！大附先輩と同じ剣道部です！」
「剣道部に女って珍しいな……」

俺がそう言うと、風花という女の子は俺の手をジッ……と見つめていた。

「……ん？どうしたんだよ」
「いや、それ何かなって思って」

その風花ちゃんが見つめていたものを確認すると、それはハナノゲンソウの資料だった。
俺はこんな妖しい物、人に見せたら色々と面倒だろうと思い、なるべく普通の感じの言い訳をした。

「えっとこれは……謎解きの紙だ。クイズ問題が雑誌にあったからやってるんだ」
「謎解き！！」

そんな、「謎解き」という言葉に敏感に反応する。なんなんだこの子は……。

「どうしたの？」
「いや！私謎解きとかすっごく得意なんです！」

風花ちゃんはそう言うと、俺の方へズイッと顔を近づけてくる。いきなりの事に戸惑っていると、それを見た優樹が俺を物凄い顔で睨んでくるのに気付いてしまった。やめろ俺を睨むな。

「へ、へぇ……」
「大附先輩！！これからスタバに行くんですよね！？」
「いや、お前から言いだしたんだろ」

風花ちゃんは、俺と巧の方を向きながら、最悪の言葉を放った。

「一緒にその謎解きしませんか！？」

ゲンソウ26→←ゲンソウ24

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す