第百二十二夜 狐につままれた顔 ページ33
「…妙技、『鉄柱当て』」
ボールがポールに当たり、相手コートに転がった。
最近覚えたばかりの丸井の妙技、鉄柱当て。綱渡りの時も苦労したが、こっちの方が精密なコントロールを必要として大変だった。
「どう?天才的?」
「マジマジすっげー!天才的ぃ!」
「今日は俺の天才的妙技、しっかり見てから負けてってくれよな」
なんというか神経をすり減らす試合。
よくまぁ丸井はこんな繊細な技を連発できるものだ。その辺はさすがボレーのスペシャリスト。
とはいえ芥川も天性の手首の柔らかさを武器としたボレーで巧みに攻めてくる。
今は妙技でリードしているが、正直厳しいかもしれない。
「そういやジロくん。ジロくんは氷帝の掟ってどう思う?敗者切り捨て…だったか?」
「ん?別に〜!勝てばいいだけだから気にしてないC〜」
「…そっか」
ボールを打ちあいながら芥川に尋ねる。
頭の中では『常勝』の掟がぐるぐると回っていた。
これでいいと思う反面、どこか納得できない自分もいて、なんだか歯痒い。
「…『常勝、立海大』…か」
「ん?丸井君どうしたの?」
「いや、別に。こんな野試合でも負けたらどやされるんだぜ?俺らは」
軽口を叩きつつ、聴覚は氷帝のコートへ向ける。
試合が終わる前に切り上げなくては。変わらない氷帝コールが耳に届く。
まだ大丈夫か。
だが問題が一つ。
一体いつ芥川にボクの正体を打ち明けるかだ。
「…ジロくん」
「何々?」
別に妖狐ってことは氷帝にはバレてるからいいとして、丸井と打ち合っていると思い嬉々とする芥川を落胆させるのは極力避けたい。
そしてふと、聞こえていた氷帝コールがピタリと止んだ。頃合いか。
「……そろそろ、終わり」
打ち返されたボールをラケットで受けて止める。
そしてそれを合図として、変化を解除していつもの姿に戻った。
つい先ほどまで目の前にいた憧れの存在が消え失せ、代わりに別人が現れたように見える芥川は目を丸くしている。
「…へっ?えっ!?」
「狐につままれたような顔になってるぞ、芥川」
「誰!?丸井君は!?」
「残念、狐に化かされたな」
ぺろりと舌を出すと、芥川は驚愕に顔を染めた。
御神籤の王子様 ver.四天宝寺
小吉っすわ。メンド…
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ノア(プロフ) - パンドラさん» ありがとう( *`ω´)ベッタベタな内容だけどやっと恋愛方向にも走れました(笑)ちまちま更新していくのでこれからもよろしくです! (2016年1月23日 19時) (レス) id: 836babe48a (このIDを非表示/違反報告)
パンドラ(プロフ) - 回を重ねる度にどんどん面白くなっていきますね!流石です! (2016年1月23日 17時) (レス) id: 4b52225c75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ノア | 作成日時:2016年1月19日 17時