第百十一夜 キミは誰？ ページ22
side 不二
カラン…と缶が落ちた乾いた音が耳に届く。
幸いにも飲み切られて、中身が溢れることはなかった。
転がってきたそれは、僕の足に当たって止まる。
「な…っ、何言ってるんスか、不二先輩。俺が俺じゃないってどういう…」
「誤魔化しても無駄だよ」
その瞳を覗き込む。しばらく泳いでいたけど、やがてスッと目を閉じて両手を軽く上へ上げた。
どうやら降参の意みたいだね。
「……不二周助といったか。その慧眼は恐れ入る」
「お褒めに預かり光栄だよ。改めて聞かせてもらうけど、キミは誰？」
「その問いに答える為に問いを返そう。お前は妖怪を信じるか？」
突然変わった口調と声音。見た目は越前のままだから少し違和感がある。
それから妖怪？なんでそんなこと聞くのかな。
「クスッ、そうだね。僕は信じるよ」
「…そうか。それならば話は早い」
そう言って立ち上がり、姿を変える。短い緑がかった黒髪は肩くらいの銀髪に、瞳は澄んだ金色に輝いて、神秘的な印象を受ける容姿。
僕より少し身長の高い彼女は、頭上の三角形の耳を揺らしながらふわりと笑った。
「ボクは、妖狐。名を白銀Aという。リョーマの家に厄介になっていてな、お前たちの話はかねがね聞かせてもらっているぞ」
「妖狐…いきなり妖怪の話を振るし、他人になってるからもしかしてとは思ったけど、本当にいるんだね。驚いたよ。それにそのジャージ、立海だね？」
「ご名答」
芥子色のジャージをはためかせる白銀さんが微笑んだ。風もないのにもふもふとしたしっぽが揺れる。
「立海の人がどうして都大会に？」
「リョーマが遅刻しそうだから時間稼ぎをしてと頼んでな。それでリョーマに化けていたんだが…っと、噂をすれば何とやら、だな」
白銀さんの片方の耳がぴくんと跳ねた。それとほぼ同時に聞こえる、ガサガサと葉が擦れる音。
「…ごめんA、なんか事故があったらしくて道路混んで…た…って、不二先輩！？」
「やぁ越前。遅かったね」
帽子や髪、ジャージに木の葉をくっつけた越前が、近くの茂みから顔をひょっこり出して、僕の顔を見るなりギョッとする。
そして白銀さんの耳を見て「なんでまたバレてんの」と顔をしかめていた。
「……面目ない。不二、ボクの正体を見破った経緯を教えてくれないか。今後の参考にする」
「演技自体はバッチリだったよ。僕の場合キミがポンタを飲んでいるところを見たからかな」
それを聞くなり、白銀さんは缶を見ていまいましげに顔を歪めた。
御神籤の王子様 ver.四天宝寺
小吉っすわ。メンド…
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ノア(プロフ) - パンドラさん» ありがとう( *｀ω´)ベッタベタな内容だけどやっと恋愛方向にも走れました（笑）ちまちま更新していくのでこれからもよろしくです！ (2016年1月23日 19時) (
レス) id: 836babe48a (このIDを非表示/違反報告)
パンドラ(プロフ) - 回を重ねる度にどんどん面白くなっていきますね！流石です！ (2016年1月23日 17時) (レス) id: 4b52225c75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2016年1月19日 17時
