離さない、離れない-Hiroomi.T- (ページ7)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:53,989 hit

7 ページ7

お母さんの両親は、お母さんが幼い頃に亡くなったと聞いていた。

HIROさんは写真を臣に渡した。

広臣「これは。」

HIRO「Aの両親だ。」

広臣「この赤ちゃんってAですか。」

HIRO「あぁ、小さいだろ。早産でな難産だった。
　医者は母親か赤ちゃんか、どちらか選んでくれって言われたよ。
　でも兄貴は”どっちも大事だから、どっちも助けてくれ”って。
　それから20時間、やっと産まれたんだ。外は真っ暗だった。
　でも俺たちは大声を出して喜んだ。家族皆で抱いたんだ。
　俺も毎日仕事終わりに病院に行ってた。
　退院して母さんに抱かせると母さんも泣いてな。
　外に出て、この写真を撮ったんだ。
　それから母さんも父さんも可愛がって近所に自慢してたよ。初孫だしな。」

HIROさんは優しそうな顔して話していた。

HIRO「登坂。」

広臣「はい。」

HIRO「Aは俺にとって大事な娘だ。兄貴と義姉さんに任されたんだ。
　今まで俺が守ってきたAを今度は登坂、お前に任せていいか？」

広臣「はい。何があっても守ります。」

HIRO「A。」

A「はい。」

HIRO「登坂と必ず幸せになれ。両親の分も。」

A「HIROさん、ありがとう。」

HIRO「明日は兄貴たちの命日だろ。」

A「うん。」

HIRO「報告しておいで。きっと喜ぶ。
　それと俺は午前中は仕事があるから午後から彩と行くと伝えておいてくれ。」

A「分かった。」

広臣「それでは失礼します。」

それから私たちは仕事に戻った。

臣はトレーニング室に、私はオフィスに。

自分の席に戻ると隣の席の夏菜子が

夏菜子「あれから臣君と続いてるの？」

A「うん。」

美咲「どうした？」

A「実はさっきHIROさんに報告しちゃって。」

夏菜子「マジで？」

夏菜子と美咲にはHIROさんとは親戚であると話してある。

社員でそれを知っているのは2人しか居ない。

美咲「でもさ逆を言えば、それだけ真剣なんじゃない？」

夏菜子「そうだよ。じゃなきゃHIROさんに言わないでしょ。
　今回は信じてもいいんじゃない？
　もし臣君がAを裏切ったりしたら一発やってやるから。」

夏菜子は空手をしていたらしく、かなりの腕前。

美咲も剣道をしていたらしい。

2人は同い年だけど心強い存在だ。

A「ありがとう。HIROさんも臣に頼むって言ってたし。」

美咲「それなら大丈夫だ。」

夜も遅くなり他の社員は帰った。