ハッピーエンドなんかない。6 ((Ryosuke.Y & Kei.I))

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貴方side





自分でも何を言っているのか理解しきれていなかったと思う。


泣かずに言えたな、
って少し嬉しいような、悲しいような…






慧は何も言わず、

表情も変えず、


ただ私を見つめていた。






無言の時が流れる。



『…これ以上、こんな関係を続けるのは嫌だから』



無言の圧に負けて、
言うはずのなかった言葉が出てくる。


自分自身にも言い聞かせるようにそう言った。



本当はそんなこと思ってないのに。

こんな関係でも良いくらいに慧が好きなのに。




でも一度溢れた弱さはもう止められなくて、



『不倫とか聞こえ悪いし嫌だなって…』


別れるための後付の理由がぽろぽろ溢れる。



1ミリたりともそんなことは思ってない。

思ったこともない。



だけど、口が勝手に動いてしまう。






『それに、最近会ってなかったから、気持ちが冷めたというか』




前からずっと少しも気持ちは変わってない。

冷めてなんかない。

慧のことはずっと好きだよ…





でもこんなこと言わないと別れられない気がするんだ。






最低だね、私。


嫌いになっていいよ…



嫌いになってよ、慧。





慧に嫌われた方が別れられるよ。

だから今だけは、今だけは、慧に嫌われたい。




『慧のこと、もう好きじゃ…』


そう言いかけて止まった声。



目の前にあるのは慧の胸元。



私のとは違う心臓の音が伝わってくる。




優しく私を包み込む腕は、
そっと私の頭を撫でた。





その温かみに涙を堪えることはできなかった。

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