ハッピーエンドなんかない。6 ((Ryosuke.Y & Kei.I))

#239 ページ42

涼介side







涼介「前は置いてあったんだけどね、落ちて割れたの」






数年前のあの日、


不自然に割れたスノードーム







『それって、もしかして、』







Aと撮られたあの日割れたのは、







『ベンチにカップルが座ってるやつ…？』





涼介「うん。そう」







ベンチに寄り添うカップル。



俺の願望を込めて作ったスノードームだった。







『そっか……


あれ好きだったのにな、私』





それに込められた意味を知らないAは寂しそうに呟く。









.









高校で離れ離れになって、



大人になって再会して、



また離れ離れになって、



すれ違って、



やっと思いが重なって、







そして訪れた今日。



俺たちはまた、離れ離れになる。




Aと俺は永遠に、あのカップルみたいにはなれないのかな

なんて思ったりもしたけど、



不思議と悲しくはなかった。









スノードームを眺める彼女を、

後ろから包み込む。




整髪料の香りがふわっと漂う。






涼介「…いつか、ああなれるといいな」




学生時代に抱いた夢は、

今もずっと夢のままだけど、



遠回りしながらも、確実に夢に近づいていることを俺は知っている。





『そうだね』






腕の中にいる彼女を、そっと振り向かせる。





大きな瞳が俺の姿を捉えて、

ひとつ、瞬きをした。








光が溢れる世界、



暖かい朝、






Aの唇にそっと、

キスをした。

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