#31 ページ32
貴方side
その後も何回か同じシーンをやった。
色んなアングルから撮るから、その分何回も彼に抱きしめられた。
でも何回やっても慣れることなんてなくて、
演技なんて必要ないくらいにドキドキしていた。
気がつけば撮影は終わっていた。
撮り終わった実感なんてなくて、まだ鼓動は早いまま。
慧「お疲れ!」
『お疲れ』
車に乗って、帰る支度をする。
帰りは伊野尾くんと同じ車で帰るみたい。
慧「ねぇ、隣座っていい?」
『いいよ』
騒ぐ心臓をなんとか落ち着かせて、平然を装う。
いつから仲良くなったんだろう。
そう思うくらいに、私たちの会話は弾んだ。
多くのスタッフが寝ている中、一番後ろの席で話す私たち。
なんだか悪いことをしている気分。
慧「ななちゃんって意外と天然なんだね」
『そう?』
慧「うん、もっと堅い人かと思ってた」
『あはは、堅くはないかな。…あ、今週末ドラマの撮影の後でいい?』
慧「あー、いいよ。確か、2日間くらいスケジュール同じだったよね?」
『そうだね。じゃあ行きやすいかも』
いつの間にか、彼の家に行くことをすんなり受け入れていて、
素直に楽しみだと思っていた。
何時間も揺れる車の中、私たちの話は絶えることなく続いた。
移動の時にこんなに話すのは初めてかもしれない。
いつもだったら、撮影した後で疲れているのに。
その時は不思議と疲れを感じなかった。
332人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りめ | 作成日時:2018年1月21日 10時