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貴方side
伊野尾くんは何を思ってあんなことを言ったんだろう。
そればかり考えていた。
でも間違いなく、顔合わせの日に彼は“はじめまして”と言ったのだから、きっと覚えていない。
覚えていたとしても、いつ、どこで会ったかなんて明確に覚えていないだろう。
数年前のことなんて……。
.
いつものようにマネージャーにマンションまで送ってもらい、エレベーターを降りたところだった。
『あ、涼介!』
涼介「おー、A!」
偶然、涼介と会った。
涼介「仕事終わり?」
『そうだよ』
涼介「お疲れ様」
『ありがとう』
涼介「あ、来る?」
そう言ってドアを指差した涼介。
私は頷いて、涼介の家にお邪魔した。
もう慣れてきた涼介の部屋。
遠慮なくソファに腰掛けた。
涼介「…仕事ってドラマ?」
『そうそう、ドラマの宣伝の雑誌の撮影』
涼介「あー、もうすぐでしょ?」
『そうだよー。…伊野尾くん、思った人と違った』
涼介「どんな人だと思った?」
『うーん、なんかね、まぁ、思ってたよりは良い人だった』
涼介「…でしょ?うちのメンバーは良い人だらけ」
『恵まれてるね。羨ましいな』
涼介「羨ましいだろ?」
そう言って彼は私に笑顔を見せた。
グループのこと好きなんだね、良かった。
デビュー当初は不安しか言ってなかったから。
なんか、私まで嬉しいよ。
『あ、そうだ!あのさ、ドラマのセリフ覚え手伝ってくれない?』
涼介「いいよー」
バッグから台本を取り出した。
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作者名:りめ | 作成日時:2018年1月21日 10時