#18 ページ19
貴方side
「オッケーです。セットチェンジ行いまーす」
私と伊野尾くんは、スタジオを出た。
「30分後にメイク室にお願いします」
スタッフさんが私たちにそう言った。
30分の空き時間か……
何をするにも中途半端だな…
慧「さっきはごめんね?」
唐突にそう言われた。
『いや、謝ることなんて何も…』
慧「どんどんポーズとっちゃったし……嫌だったかなって」
『大丈夫。仕事だし、』
仕事だし、なんて言っちゃったけど、
全く嫌だとは感じなかった。
慧「だったら、良かった。
ねぇ、外行かない?」
『え?』
行こーよ、と言いながら彼は私の手を引っ張っていった。
『ちょっと、』
何を考えてるんだ彼は。
ドラマで共演するってだけで、仲良くもない異性にこんなにも馴れ馴れしく接するものか?
こんなに馴れ馴れしい共演者は初めてだ。
もしかして、石井さんみたいな遊び人だったりして?
そんなことを考えてるうちに、施設の裏口から外に出た。
曇っている空。
冷たい風が吹いた。
慧「思ったより寒かったね、」
そういう彼の手と私の手は繋がれたまま。
『ね、ねぇ…!』
慧「ん?…あー、ごめん」
彼は手を離した。
私の手に少し残る彼の温もりが、冷たい風で冷やされる。
ここはちょっと高台にあって、裏口からはそこそこ遠くまでの景色が見渡せた。
曇ってるし、別にキレイでも何でもないけど、
心が落ち着いて、空気が新鮮に感じられた。
慧「ななちゃんってさ、
かわいいね」
隣には私をまっすぐ見る伊野尾くん。
その瞳は、嘘やお世辞を言っているようには見えなかった。
332人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りめ | 作成日時:2018年1月21日 10時