・ ページ16
・
ーーさみしがってくれへんの？
視線を横に流す。
さっきまで隣にいたのにもういない。
まるで現状を風刺しているかのようで少し胸が痛くなった。
…あぁ、きっと。
きっと堂前さんは知ってるんだ。
あんな一言を残して席を立つなんて。
私が追いかけるってきっと堂前さんはわかってるんだ。
私は立ち上がって堂前さんを追いかけた。
こわい。
すごくこわい。
抑えていた気持ちが少しずつ溢れていく。
計算高い堂前さんも
大好きな先輩が遠くに行っちゃうっていう事実も
孤独も
全部全部。
こわかった。
周りにどう思われるかとか嫌われたらどうしようとか
今までの関係性は？これからは？
どんな顔されるか
どんなこと言われるか
知るのがこわかった。だから知らないふりしてた。
でも。
私はなっがーい時間をかけてようやく正式に気付いてしまった。
どこにいるかもわからない堂前さんをただひたすら探す。
私、きっと。
角を曲がったとき見覚えのあるセーターを見つけた。
堂前さんにずっと前から。
なぜだか声が出ない私はとにかく後ろ姿に近付いた。
めちゃくちゃ恋してる。
追いついた先で袖口をきゅっとつかむ。
「あれ、A？」
震えそうなくちびるに力をこめてどうにか声を絞り出す。
『…さみしいです…』
「へ？」
『東京、行っちゃうのさみしいです』
堂前さんが私の方に向き直る。
『私こうゆうこと絶対言わんようにしよって思ってたんで
すよ』
「…うん」
意味の分からない状況のはずなのに堂前さんはすぐに相槌を打ってくれた。
『大好きな先輩やからこそ笑顔で送り出そうって思って
て。……やのにぃ…』
想定外も想定外。
目に涙がみるみるうちに溜まっていく。
『私うそつけへんみたいでぇっ…どうしても気持ち隠しき
れへんくて……だからぁ…』
見て見ぬふりしてきた私の気持ち。
『大好きな先輩のこと、…』
…違う。
私は首を左右に振った。
『大好きな堂前さんのこと』
まっすぐ目を見て。
こわくてきっと手も震えてるけど、
そんなこと気にする暇もないぐらい今はあなたに夢中だから。
やっと気付けたんだ、堂前さんへの気持ち。
『笑ってばいばいできないです』
周りには誰もいなくて、白い壁だけが私たちを囲う。
数秒の沈黙を堂前さんが断ち切った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 132人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ふみうか - オズワルダー・カイさん» そんなこと言っていただけるなんて…！そこの黄金比率だいじですよね(( こちらこそ読んでいただいてありがとうございます！！ (2023年4月8日 19時) (
レス) id: b520771701 (このIDを非表示/違反報告)
オズワルダー・カイ(プロフ) - 阪本さんのかわいいところとキモいところがうまく表現されてて、面白いです！ ありがとうございます！ (2023年4月8日 14時) (レス) id: e9b28fbcad (このIDを非表示/違反報告)
にこまる(プロフ) - ふみうかさん» うわー😭ありがとうございます！！😭😭 (2023年1月4日 21時) (レス) id: 277042bd5f (このIDを非表示/違反報告)
ふみうか - にこまるさん» ホントですか！！ありがとうございます😭遅くなると思いますが、また書きますね！ (2023年1月4日 21時) (レス) id: b520771701 (このIDを非表示/違反報告)
にこまる(プロフ) - お話すごく面白かったです泣 ｷﾓﾄさん需要ありまくりなので、また書いていただけるとありがたいです👍 (2023年1月3日 11時) (レス) @page9 id: 277042bd5f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ふみうか | 作成日時：2022年11月20日 21時
