no.03 ページ3
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「なかった事にしたい……」
「ぶはっ。そんなに？」
俯きながら嘆くと、頭上から軽く笑う声が聞こえた。
いやまさか広報担当をしているチームの大事な選手と
一夜を共にしてキスしてしまうなんて……
しかも酔った勢いなんて１番最悪じゃんか。
「……………はぁ、」
あっ、いやでも逆にそれだけで済んで良かった。
それ以上の事がなくてよかった。本当に。
「まあ海外だと普通にするしね」
「ここ日本」
「わぁーかってるよッ！！！」
あーもう！なんか角名くんと喋ると体温が0.5℃上がる！！
心の中で文句を言いながら前向きに色々と考える。
しばらく険しい顔をして、悩んだ末に出た答えが、
「そうだ。普通に過ごそう」
「は？」
特に何もなかったという事にして、
とりあえずお互い今まで通り普通に過ごすということだった。
「今もこうして話せてるわけだし、ね？」
「ふーん。ま、いいんじゃない？」
そんな私の意見に角名くんは適当に返事した。
そしてゆっくりとベッドから出て、
ん、と体を伸ばして軽くストレッチを始めた。
ぼんやり見入っているとTシャツの下から角名くんの腰がチラリズムした。
なんだか見ちゃいけない気がして慌てて目を逸らす。
………危険だ。早く準備してうちに帰ろう。
今日オフだし。慌てて起こしちゃったし。まだ早い時間帯だし。
角名くんゆっくりしたいだろうし。
それにあまり長居しないほうがいい気がする。
もらった水を口に含んでいると、
あっ。と角名くんが何か思い出したように私を見た。
「結構悪くなかったよ」
「んぶふッ！？」
！？ な、なにが……！！？
思わず飲んでいた水を吹く。
そんな私をみて彼はまた軽く笑っていた。
その後、昨日の服に着替えて角名くんちをあとにした。
まだ眠たいはずなのに。そんなにウチまで距離もないのに。
これも運動だからと言って彼は一緒に歩いてアパートまで送ってくれた。
「………慣れてるな、あれは」
帰ってきたアパートの部屋のなか。
浴室の前でそう小さく呟きながら、
ふんわりと角名くんちの匂いがする服を脱いだ。
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作者名：. | 作成日時：2020年5月29日 23時
