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EJP(東日本製紙)RAIJIN の広報担当になって、
仕事内容や周りの環境にも少しずつ慣れてきた頃のこと。
広報の先輩やマネージャーさんに誘われて、
チームのベテラン選手や、
同期の選手たちと一緒にご飯食べに行った。
基本、お酒に強かった私は少し調子に乗っていたんだと思う。
明るく楽しい雰囲気に包まれて、
いつもより早いペースで飲んでたことは覚えてる。
ただ、その後からの記憶はほぼなくて。
気が付けば、朝方だった。
「………は?」
酒は飲んでも飲まれるなとはよく言ったもんだ。
目が覚めるとそこは自分の家じゃなくて。
着ている大きめの白いTシャツと短パンは明らかに自分のものじゃなかった。
「え、ええ?」
シンプルという言葉が似合う部屋。
どこか知っている匂い。
枕元にはペットボトルの水。
周りの状況を把握しては、
少しずつ意識がはっきりとしてくる。
ふと、隣に人の気配を感じて恐る恐るそちらを見る。
ライトブラウンの掛け布団から覗く黒髪。
嫌な予感をさせながら、ゆっくりと掛け布団をめくる。
「……え、は、うそ、」
私のとなり。
うつ伏せの状態でぐっすり眠っていたのは、
同期であり、EJP RAIJIN所属選手、
角名倫太郎くんだった。
あっ、これ夢だ……多分、夢。
頬でも叩けばきっと痛みも感じないはず。
一度ペチンッと思いっきり自分の頬を叩いてみる。
うん。痛い。これ夢じゃないわ。
「す、すなくん……」
黒いTシャツに包まれた細身だけど鍛えられてる体を揺らす。
本当はもっと寝かせてあげたい。そっとしてあげたい。
だけど今はそれどころじゃない。
「起きてぇ……」
頼む、お願い、早く起きてくれ。
昨夜、一体何があったのか。
なぜ私はここにいるのかを教えてほしい。
そして『昨日は何もなかったよ』と言ってほしい。
そう願いながらグイグイとその体を揺すり続けると、
角名くんは「んん…」と少しだけ顔を歪ませた。
*
Vリーグの選手は寮生活の方がほとんどですが、
角名くんはアパートにいる設定にしてます。
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作者名:. | 作成日時:2020年5月29日 23時