恋ではない (ページ26)

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「ねえAちゃん、やばいことしていい？」

『なにそれ笑笑』

返事をする間もなく、

手を引かれて体を包み込む暖かさに状況を理解する。

『私いいなんて言ってないよ？』

檜「ダメって言っても離さんし笑笑」

背中に回った腕に力が増した。

檜山くんってこんなにSだったっけ。

ふいに目線が絡み合って、

一瞬時が止まったような感覚になった。

恥ずかしくて目を逸らしたいのに

あまりに優しい顔をする彼から目が離せなくなる。

体温がどんどんあがってくのが自分でもわかるくらいにドキドキしてる。

「知ってると思うけど…俺、Aちゃんのことが好き。会う度に好きになってく。」

「だからね、俺の事好きになって欲しい。」

彼からのお願い事ははじめてかもしれない。

けれどそれは絶対にあってはならないこと。

だから私は断らないといけない。

そしてさよならをしなければいけない。

そう分かっているのにそれが出来なかったのは、

既に彼が私にとって大切な存在だったから。

さっき一瞬でも胸が高鳴ってしまったから。

離れたくないと願ってしまったから。

さよならしたくなくて、ダメな私は

彼の胸のあたりに顔を埋めて、抱き締め返してしまった。

＿＿私たちはこの日からダメな方向に崩れていった。