＊ ページ16
〇
ﾆﾊﾟｯと満点の笑顔で嬉しそうに飛び跳ねるラグドール。それを横目に、Aをある程度知っている相澤は訝しげに目を眇め、余計な事はするなよと心の中で静かに祈った。
「調べるのはだーい好き。分析するのはもーっと好き！」
「アチキもだーい好き！アチキたち似た者同士なのかも？」
「そうかもー！じゃあお近付きの印に、ちょーっとだけ教えてあげちゃうね！これ結構貴重だよ？」
ラグドールから1歩離れ、その場でくるりと回る。口元に手を当てﾆﾔﾘと悪戯っぽく笑ってみせた。
ｷﾗﾘと光る金色のボタンが反射し、呼応するように瞳のルチルも煌めく。
「私の名前は月慕。個性は身体強化…ってことになってる！
ﾊﾟｯと両手を広げ、空を見上げる。それからゆっくりと視線を彼女に戻す。
レンズのような目を見開き、こちらを一心に凝視するその真剣な表情は精巧で、一等美しかった。ずっと眺めていたいくらいだったが、相澤さんの視線が痛かったので其方に目を向ける。
「女子トークに水を差すのは無粋じゃない？」
「そんな可愛らしいものには思えなかったがな。一体何を企んでる」
「やだなぁ、ちょっと洒落たご挨拶をしただけだよ」
「どうだか」
いつにも増して鋭い相澤さんを躱して、宿舎の方へ足を向ける。徹夜慣れはしているが、此処に来る前に詰め込んでいたこともあり流石に疲れた。眠い。
視界を遮る前髪を乱雑にかき上げ、ゆっくりと息を吐く。
「少し寝てくる。日の出ている間は頼んだよヒーロー」
「......仮眠室は入って左にある。使用許可は貰ってるから好きに使え」
「やった！相澤さんやっさしーっ！」
「木の上で寝られるよりはマシだからな」
「行動パターンも読まれてら...」
はは、と笑って誤魔化し、今度こそ宿舎に向けて歩き出す。何時間程仮眠が取れるか指を折って数えようとして、はたと立ち止まる。
昨日ある程度祓った筈の気配が僅かに色濃く、宿舎を囲うようにして渦巻いていた。気の所為、で片せたら良かったが、明後日辺りには実害を出し始めるであろう大きさの呪力。
並々と注がれ蓄えられつつあるそれに、たった一晩過ごしただけでこれか、と息を呑む。そして再度、大きく息を吐いた。巡回の見直しをしなければならなくなった。
「難儀なもんだなぁ...ヒーローも。呪術師も」
歩きながら放った苦無は、呪霊本体の中心に深々と突き刺さっていた。
○
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2989人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
コロッケ - 本当に好き！主人公の性格とかも面白いしヒーローと呪術師の価値観の違いも上手く書かれてて最高です！是非更新宜しくお願いします！ (11月17日 2時) (
レス) @page17 id: 0002858abd (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 更新されててびっくりしました！これからも更新がんばってください！応援してます (10月19日 20時) (レス) @page16 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 占ツクにこんな文章のしっかりしてる最高の作品があったとは。もう何回読み返したかわからない。更新お待ちしてます大好きです (8月30日 18時) (レス) id: b3cc1c8641 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 投稿ありがとうございます！オリ主ちゃんや、ストーリーが好みすぎて何度も繰り返し読んでます！これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page15 id: 852819b8c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのゴリラ - ほんまに好きです最新まってます (8月15日 23時) (レス) @page14 id: fa8371b6ca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ハル | 作成日時：2022年8月29日 22時
