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夜も殊更に深く、日中の茹だるような暑さが嘘のように冷気が地肌を掠める。
そんな薄ら寒い空気から守るように窓が締め切られた廊下を、漸く解放された補習組が大きな欠伸を零しながら這うように歩いていた。
「眠い……マジ眠い…」
「ほぼ1日かけて山登った後にコレだもんな」
「鬼の所業過ぎん？？」
実技が奮わなかった結果だと重々理解してはいるものの、弱音にほぼ近いものしか口から出てこない。
寂寥感の滲む闇がそうさせている、ということにしておいて欲しい。明日からまた訓練三昧なのだ。ここでメンタルがやられているようじゃ、ヒーローなんかにはきっとなれない。
数時間後に朝日を拝むことになる己の為にも、皆は部屋を目指して一心に歩いた。
「＿＿＿は、えっ…？」
「どうした？何かあったか？」
「いや、彼処……森の入口前で歩いてるのって…」
「月慕ちゃん…だよねっ？！」
「もうとっくに消灯時間は過ぎてるよな…。彼奴あんな所で何してんだ…？」
窓にぺたりと張り付き外を凝視していた瀬呂に続き、全員がガラス越しに外を見回しその姿を捉える。
煌々と月が輝く夜空の下、影に覆われて最早洞窟と化している木々の前をゆったりとした足取りで彼女は歩いていた。
「お前ら何してる」
『ﾋﾟｬｯ…！？』
唐突に背後から声を掛けられ、一斉に飛び上がった。
激しく動悸する心臓を両手で押さえつつ振り向けば、つい先程別れたばかりの相澤が佇んでいた。
早く寝ろと言わんばかりの圧に切島が慌てて外を指さす。
「せ、先生！外に月慕が居たんすよ！だからびっくりして…」
「月慕が…？」
訝しげな視線を彼らに向けながらも指し示された方向を見れば、漸く見慣れてきた顔が森の前を横切る所だった。
そこで朝に彼女の言っていた「温存」の意味をようやっと理解する。相棒だと言っていた愛刀を腰に提げた呪術師は、どうやら夜の間に職務を全うするらしい。
「呼び戻した方が良いっすよね…？」
「……いや、いい。あの様子じゃ任務中だろう。俺たちがどうこうできる問題でもない。止める権利もない」
「でも明日も早いですよ」
「相手はプロだ。それに仕事で来てる。自己判断で寝るなり休むなりするだろう。お前たちが気にする必要も暇もない。今は自分のことを考えろ」
ほら行った行った、と急かされ足を動かす。その横目で再び彼女のいた方へ視線を向ければ、其処にはもう誰もいなかった。
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コロッケ - 本当に好き！主人公の性格とかも面白いしヒーローと呪術師の価値観の違いも上手く書かれてて最高です！是非更新宜しくお願いします！ (11月17日 2時) (
レス) @page17 id: 0002858abd (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - 更新されててびっくりしました！これからも更新がんばってください！応援してます (10月19日 20時) (レス) @page16 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
マリモ - 占ツクにこんな文章のしっかりしてる最高の作品があったとは。もう何回読み返したかわからない。更新お待ちしてます大好きです (8月30日 18時) (レス) id: b3cc1c8641 (このIDを非表示/違反報告)
わらび - 投稿ありがとうございます！オリ主ちゃんや、ストーリーが好みすぎて何度も繰り返し読んでます！これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page15 id: 852819b8c2 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのゴリラ - ほんまに好きです最新まってます (8月15日 23時) (レス) @page14 id: fa8371b6ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハル | 作成日時：2022年8月29日 22時
