ラブレターが聞こえたのなら

letter 3 ページ18

、








レンくんからの手紙は月に一度と
何故か決まっていた。

私はもう、レンくんの顔も上手く思い出せないし
レンくんの声も、仕草も覚えていない。
きっと、変わってしまったに違いない。


雨は轟々と振り続ける
白いカーテンの隙間から 真っ黒に青い光が差し込んだ。



私はこれから
この繊細な字を書くレンくんを知らずに
大人になっていくのかな

レンくんのいない時間を重ねていくのかな

知らない
知らないレンくんが増えていくのかな



苦しいよ、レンくん。
助けてよ、レンくん。
失恋ってこういうものなのかな？



カーテンをちらりとめくる
空はこんなに暗かったのか
隣のアイドルの部屋は明かりがついている。

私の部屋は真っ暗なまま
明るい隣の部屋を見つめる

紫耀くんの手を思い出してみて

大きくて柔らかくて優しい手
強くて無敵な人気のあなた



そんな彼に恋をしているのは多分
ここにいる私だけじゃなくて
あの満ち足りた顔をしていた女の子も
きっとこの間のテレビを観た女の子も

みんな紫耀くんに夢中なんだよ。





カーテンを閉めて、電気を付けた。
机の上、薄紫の便箋は開いたまま


私は朝顔の栞を手に取って
今読み進めている文庫本に挟んだ

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