揃って ページ12
昨夜の雨で濡れた石階段は濃い鼠色に染まっている。歩きながら天に手をかざすと、甲から指先に移動したテントウ虫が一度動きを止めてから羽根を広げて飛び去った。
後ろのりゅう兄を振り返る。
「あと百段くらい登った先に、神社があってね、古いしボロいし誰も来ないの」
「あと百段か……そうか…………」
到着。
そこから見下ろせる景色を眺めるりゅう兄を置いて、さっと社の裏に回った。昨夜の雨で流されていないか、確認したいものがあったのだ。
戻ると、りゅう兄は湧き水を利用した手水舎の下で、石垣で組み立てられた槽の縁に浅く腰掛けていた。手を水中に浸しているようだ。
その頭上にあるものを見て血の気が引いた。元々朽ちかけの瓦は昨日の雨風によってさらに脆くなっていて、滑り落ちた一枚の瓦がりゅう兄の頭に向かってまっすぐ落下する。
「──！」
叫ぼうとした口は、駆けようと踏み出した足は、実際に動くことはなかった。
「あれ……？」
「如何かしたか」
ぱちぱちと瞬く。振り返ったりゅう兄の傍に寄り、りゅう兄の体を上から下までじっくりと見た。
無傷でけろりとしているりゅう兄の服装は、半袖の白Tシャツに普通のズボン。何とズボンに至っては私の母の…つまり女物のGパンである。叔父の服では腰周りが緩そうだったので、母の服を渡してみたらぴったりだったのだ。
瓦の剥がれた屋根を見上げる。確かに、ここから瓦が落下したように見えたのだ。
「さっき風ふいた？」
「否」
──風でないなら、こちらに背中を向けたりゅう兄の服が、ぶわりと膨らんだのも、そしてそれが大きく開いた口のように見えたのも、口が瓦を呑み込んだのも、全て私の気の所為だということになる。
そんな盛大な見間違いがあるのだろうか。首を傾げる私の横で、りゅう兄は両手で掬った水を口許に持っていこうとしていた。
「飲んだらダメだよ。汚いよ」
「澄んでいるように見えるが」
「一見きれいでも汚いの」
「そう云うものか」
「そういうものです」
透き通った水はりゅう兄の肘を伝って滴り落ちた。浅く掛けていた腰を上げ、彼は濡れた手をこちらに伸ばし、私の首筋に当てがった。冷たくて心地よい。
彼はやけに真剣な眼差しを此方に向けた。
「�猴儉瓩郎僂鵑世�？」
「？ ただの散歩だもん。用なんてないよ」
「……そうだったな」
変なりゅう兄。私がそう言うと、りゅう兄は手を退けた。
「帰ろう」
差し出されたりゅう兄の手を握った。
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若葉 - 途中からおじさん亡くなっているのかなぁ〜とは思ったけどすっきり読めて面白かったです。 (2023年4月10日 17時) (
レス) @page16 id: 7981b3d9d1 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 月@坂田家さん» 妄想ありがとうございます(？) 芥川さんに恋愛感情はありませんが夢主が「恋人ごっこしよ〜」て頼めばワンチャンあるかもです (2019年10月14日 21時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 龍さん» ありがとうございます！ 番外としてなら書いてみたいですね〜。コナンとのクロスオーバー……この夢主は犯罪者なので罪が必ず裁かれるコナン界では圧倒的不利…！ (2019年10月14日 21時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
月@坂田家 - 龍さん» 最高かよ(真顔)ここからは私の妄想ですが僕の人と←←(すみません)夢主ちゃん付き合う的な？妄想してました。はい←← (2019年10月14日 18時) (レス) id: b21dfdda1d (このIDを非表示/違反報告)
龍 - とても面白かったです！続編が出るなら即効読みたいです！！探偵社と関わったりポトマと楽しく任務もこなす様子とか読んで見たいです。クロスオーバーで、コナンとのコラボもありかもと、想像してます！これからも応援してます。 (2019年10月8日 17時) (レス) id: 8c48355218 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年5月3日 14時
