お礼なら…… ページ32
『歌は、音楽は、人生を共に生きてくれるものだって、僕は思ってるよ』
「共に…」
『音楽は楽しみや喜びはもちろん、つらいことや悲しい現実も一緒に受け止めてくれるっていうのかな。僕はそんな感覚を持ってる』
先生の、お腹に響く低い声は、心にすーっと染み込んでいくような心地よさがある。
ざわざわした気持ちが落ち着いていく。
「……そうですね。私、合唱をやっててよかったと思ってます。先生が誘ってくださらなかったら、今頃はどんな自分かわかりません」
太一への罪悪感で押しつぶされそうだった自分は、こうして誰かのために歌うことで救われてる。
隆弘と別れて絶望してしてた時だって……
合唱に誘われて歌う楽しさを思い出した。
歌に支えられた。
「本当にありがとうございます」と改めて先生にお辞儀をすると、
『お礼なら……、隆弘に伝えて』
と、先生は微笑んだ。
「どうして隆弘に……」
『実は、1年半前にみおちゃんを合唱に誘ったのは、隆弘に頼まれたからなんだよ』
「……え？ どういうことですか…」
突然先生から隆弘の名前が出て戸惑う。
そんな私を見て、先生は少し困り顔で『黙っててごめんね』と言った。
『みおちゃん、一時期演奏会に行かなくなったでしょ』
「……はい、そうですね……」
隆弘と別れて何もかもが嫌になっていた頃、大好きだったミュージカルや演奏会を観ることをやめた。
それまでは先生と一緒に観に行っていたけど、そんな気持ちになれなかった。
『隆弘は心配してた。僕と会うとみおちゃんの様子を聞いてきたよ。“みおと会ってる？” “みおと演奏会に行ってる？” って』
「……」
『僕が、みおちゃんが全く音楽を聴かなくなったことを伝えた時、隆弘はまるで自分のことのように辛そうだった。その時初めて、君たちが付き合っていて別れたことを話してくれた』
「……すみません、ずっと黙っていて……」
『ふふっ、いや、いいんだよ。僕もなんとなく気づいていたから』
先生は優しく微笑みを返してくれた。
『その時隆弘に頼まれたんだ。“みおを、先生がやってる合唱団に誘ってほしい”って。それで僕はみおちゃんをこの団に誘った。だから、お礼なら隆弘に言ってね』
「…………はい」
また１つ、隆弘の優しさに支えられていたことを知った。
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
