涙空 ページ28
ライブ後、私を心配する香織が、マンションまで送ってくれると言ってくれたけど、太一のところへ行くからと断った。
“みお、電話出られなくてごめんな。
メッセージ見たよ。
連絡くれてありがとう。
ひとつだけ、約束してほしい。
ライブが終わったら、俺の家へ帰ってきて。
待ってるよ”
ライブの最中に太一からメッセージが届いていたのに、気づいたのは公演後。
‘なにも相談せずにごめんなさい。
ライブは今終わりました。
今から向かいます。’
太一へメッセージを返し、彼の自宅へ向かう。
外の空気はひんやりとしていて、さっきまでのライブ会場の熱気が嘘のよう。
……そうだ。
夢だったんじゃないかな。
全部。
魔法使いの魔法で、夢をみてただけ。
なんて。
「…そんなわけないね」
夢だったなら、覚めた時は幸せな気分なはず。
夜空を見て哀しくならない。
涙なんて出ない…
インターホンを鳴らすとすぐに扉が開き、太一が笑顔で迎えてくれた。
『みお、お帰り。良かった、遅いから心配……、』
聞き慣れた彼の優しい声は私を見るなり途切れ、
「……」
『……みお、泣いてた？』
彼が纏う空気が変わってしまった。
憂いを帯びた哀しいものに。
私のせい。
大切な人なのに。
この幸せを守りたいと思っていたのに。
「……ごめ、……ごめんなさい……」
‘ただいま’と返すことができず、震える声で言えた言葉は、これしかなかった。
‘必ず帰ります’ と、ライブ前には伝えていたのに。
結婚すると決めたのに。
『やっぱり、忘れられなかったか……。彼を……』
「っ、ごめんなさい……」
太一の哀しい微笑みと、右の頬に感じる心地よい彼の手の温もりに、目頭が熱くなる。
どうして、こんな瞬間にも優しくてあったかいの。
どうして私は、この手を取ることができないの……
『はい、これ飲みな。飲み終わったら、話をしようか』
「……ありがとう」
リビングのソファに座り、太一がいれてくれたあったかいカフェオレを啜る。
太一も私の隣にゆっくりと腰を下ろした。
『今日は仕事でトラブルがあって忙しくて。電話にすぐ気づけなくてごめんな』
「ううん、太一が謝ることじゃ……」
『俺が電話に出られていたら、ライブには行かせなかった』
「……ごめんなさい」
『ははっ！ 嘘だよ。そんな縛るようなことしたくない』
「……」
太一の明るい笑い声が空間に漂い、そして静かになった。
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
