Don’t let me go ページ26
「香織……、私やっぱりこれ以上ここにいられないよ……」
『みお？ どうしたの……』
隆弘の歌声は、セピア色の過去の思い出を色鮮やかに心に映し出す。
最奥にしまったはずの想いを胸いっぱいに広げていく。
手遅れになる前に席を離れようと思ったその時、ステージが暗転し風が吹いた。
哀愁を帯びたピアノの伴奏に耳を囚われ、続いて聴こえてきた彼の伸びやかな歌声に心を掴まれた。
心惹かれる歌、音楽……
「この曲……」
私の動きが止まったことに気づいた香織が『“Don’t let me go” だよ』と、耳元で教えてくれた。
「Don’t let me go……」
江田さんの手紙の最後に記されていた曲。
聴いてほしいと……
それは、かつての恋人を忘れられず、今でも想い続ける男性の心を綴った歌だった。
元恋人への募る想いが胸を突く、そんな歌。
本当はずっとそばにいたかった。
けれど、別々の道を選んだ。
選ぶしかなかった、と……
今さら2人に戻ることなんてできないとわかっていても、
もしもあの時、こうしてたら……
もしもあの時、この手を離さなければと、
後悔と未練が交錯する、執着にも似た愛情に、
胸が軋むように痛む歌。
隆弘の歌声は、まっすぐで、情熱的で、繊細。
心が震える。
聴いていると感情が揺さぶられて、冷静でいられなくなる。
隆弘との思い出が脳裏を過ぎり、胸が熱くなる。
彼と結んできた確かな絆を実感して、泣きたくなる。
どうして……
あんなにつらい想いをしてもなお、この気持ちは消えないの。
だからここへ来たくなかったの。
前を見ようと、
もう二度と会わないと言ったのに、
どうして来てしまったの。
メインステージの隆弘の姿が滲んでいく。
『切ないな……、“君にはもう会えない”、“夢で会えたら” だなんて…』
香織がステージ を見つめて言う。
私は頷くことで精一杯だった。
『みお、泣いてるの……？』
「……っうっ…」
『みお…』
香織の手の温もりを背中に感じた途端、堰を切ったように頬をつたっていく涙。
もう、溢れて止められない。
止めることができない。
涙も、心からの本当の想いも……
ずっと、隣にいてほしい
あなたにはもう会えないなんて
Don’t let me go
行かないで……
「隆弘、そばにいさせて……」
香織の腕に包まれ泣いた。
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
