香織の後悔 ページ21
両手で顔面を覆ってその場でしゃがみ込んだ私に『みお、座ろう？』と、香織の優しい声が聞こえた。
香織に支えられて立ち上がり、近くの椅子に腰を下ろした。
「私……、私はっ、」
『みお、喋らなくていいから、私の話聞いて？』
コクコクと頷いて、香織の声に耳を傾けた。
『私はみおのこともニッシーのことも大好きだよ。2人は私にとって大事な友だち。だから2人が付き合うことになったって聞いた時、跳び上がるほど嬉しかったんだ』
もう何年も前のこと。
隆弘の飾らないまっすぐな人柄に惹かれた。
音楽で人を幸せにしたいという、彼の願いを一緒に夢見たいと思った。
『お互いを大事に想い合う2人は、とても眩しくて素敵だった』
隆弘と過ごしたキラキラとした日々が甦る。
かけがえのない日々を思い出せば、胸に鈍い痛みを覚える。
『2人が別れたって聞いた時、信じられなくて。ニッシーのみおに対する仕打ちを許せなくて、ニッシーとはしばらく口をきかなかった。……今思うと私も子どもだよね』
そう言って香織は小さく笑う。
『でも、違う、ニッシーはそんな最低な奴じゃないって気づいたのは、ニッシーの哀しそうな笑顔を見た時』
その時、私は顔を上げて香織のうっすらと濡れた瞳を見た。
『私がみおの話をすると、ニッシーは哀しく、寂しく笑う。それがニッシーの心だってわかった時、私めちゃくちゃ後悔した。2人がこうなる前に、私にできることがあったんじゃないかって……』
「……」
香織、
私、胸の痛みでどうにかなりそう。
もうこんなに苦しいのは、嫌なの。
『みおはみおで、豊田さんを気遣って自分の本音と向き合ってない……』
「私……」
『わかってるよ。豊田さんが素敵な人だってことは。あんなに一途に想ってくれる人はいない。みおが立ち直れたのは、豊田さんのおかげだってことも』
「うん、うんっ……太一のおかげなのっ」
嗚咽を堪えてやっとそう言えた。
『そうだね、みおは豊田さんを大切にしたいって言うけど、私は何よりもみお自身を大切にしてほしい。自分の気持ちを大事にしてほしい』
「……」
自分の、私の気持ちは……
もう、ぐちゃぐちゃだ……
『あとね、これ、預かってきた。江田さんからの手紙……』
香織から白い封筒を受け取った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
