ヤマザクラ(side N) ページ11
みおは、2年前の俺の勝手な想いや過ちを、静かに聞いてくれた。
そして俺に疑問を投げかける。
『隆弘にとって普通の幸せって何？ 適齢期に結婚して、子どもを産んで、子育てをすること？』
みおの言葉で、俺は自分が描く幸せの形を勝手にみおに重ねていたことを思い知った。
俺たち2人だけの幸せの形を、探すべきだったのに……
『私は隆弘と一緒にいることが幸せだった。我慢も、寂しさも、不安も、隆弘と一緒に乗り越えたかったよ……』
『私への罪悪感なんて……必要なかったの。必要だったのは、気持ちを伝えることだった。私も、隆弘も……』
みおの言葉は、俺にさらに後悔を募らせた。
あの時、どうしてもっとみおと向き合えなかったんだろうと。
でも今さら過去は変えられないから、
これ以上後悔を重ねたくないから、
伝えさせてほしい。
変わらない想いを。
「みお、勝手だってわかってる。でも、俺は今でも……、」
『隆弘。隆弘が選んだ道は、間違ってないよ。別れ方は理不尽だったけど…』
「みお……」
『間違ってない。』
「みおっ、俺はっ……」
『やめて、言わないでよ。……お願い』
俺が何を伝えようとしているのか、
みおは気づいて、
はっきりと俺の言葉を拒んだ。
でも彼女の表情は柔らかく穏やかで、
その優しい瞳に吸い込まれそうになった俺は、言葉を呑み込まざるをえなかった。
胸がざわついて落ち着かない俺に、みおはふわりと微笑む。
『ねぇ、隆弘。ヤマザクラって、知ってる？』
「え…ヤマザクラ？」
『そう。ヤマザクラは日本固有の野生種の桜のこと。これはソメイヨシノだよね』
そう言って桜の古木を見上げるみお。
俺もつられて顔を上げ、夜空を埋め尽くす花々を見た。
『ヤマザクラは、ソメイヨシノほど豪華絢爛に花を咲かせるわけじゃなくて、周りの自然と調和するように咲くの。控えめで、趣があって、私は好きなんだ』
「……そんな桜があるんだ。知らなかった。見てみたいな」
『ヤマザクラの名所もたくさんあるんだよ』
明るく、和やかに桜について話すみおが俺に何を伝えたいのか、いろいろな想像を巡らせるけど、わからない。
ただ確かなことは、俺の胸騒ぎが刻一刻と存在感を増していることだ。
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
