迷い ページ1
『結婚しよう、みお』
「っ……」
驚きで声も出せない私に、太一は言った。
『すぐに決められることじゃないってわかってる。返事は、帰国したら聞かせてほしい。ただこれだけは伝えさせて』
「太一……」
『……俺が、みおを絶対に幸せにする。どこでも、どんな時も』
強く、強く抱きしめられた。
太一の速い鼓動を聞き、胸がきゅっと疼いた。
それから太一は、普段と変わらない様子で私をマンションまで送ってくれた。
おかしかったのは私。
帰りの車内では、何を話したのかほとんど覚えていないし、ずっと落ち着かなかった。
『嬉しくないの？ プロポーズされたんだよ？』
太一がベトナムへ発って4日、週末の午後。
2人目の子を出産して間もない香織が、電話口でそう言った。
「嬉しいよ、でも…」
『でも？』
「急な話すぎて……」
私をずっと想ってくれて、辛い時に支えてくれた太一。
お付き合いはまだ半年だけど、それまでも友人として側にいてくれた。
私にいろんな価値観や人生の楽しみ方を教えてくれて、彩り豊かな日々をくれる。
お付き合いを始めた時から結婚のことは意識していた。
ただ、
結婚だけだって人生の一大事なのに、同時に海外なんて…
仕事も辞めなきゃいけない。
海外、ベトナム…
言葉、環境、歴史、生活文化がまるで違う国…
戸惑わないはずが無い。
迷わないはずが無い。
そんな気持ちを香織に話した。
『そうだね。迷って当たり前か…。だから豊田さんも時間をくれたんでしょ』
「うん……」
『……迷ってるのは、それだけが理由？』
「……」
『……みお、聞いてる？』
「……う、ん。聞いてる。あ……泣いてるね」
電話の向こうで赤ちゃんの泣き声が聞こえたから、
「香織、ありがとう。また電話する。また今度赤ちゃんに会いに行くね」
『ごめんっ！みお。また今度ゆっくり話そう！』
「うん、またね」
香織からの問いかけに答えることなく電話を終えた。
太一が私と結婚したいと思ってくれている。
こんなに幸せなことはない。
私も彼を幸せにしたい。
なのに、
“嬉しくないの？”
“迷ってるのは、それだけが理由？”
香織の言葉が胸につかえてしまう。
こんな自分がたまらなく嫌。
私はリビングのソファに座り、徐々にオレンジ色に染まっていく室内をただ眺めた。
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さら(プロフ) - chr916さん» お返事遅くなりました。何度も読み返してくださって嬉しいです。続きを更新しました。コメントありがとうございました。(^^) (2022年10月11日 4時) (
レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» ご無沙汰しています。続きを少し更新しました。いつも感想をありがとうございます。(^^) (2022年10月11日 4時) (レス) @page49 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
chr916(プロフ) - 何度も読み返すくらい大好きです！続きが早く読みたいです🙇♀️ (2022年10月2日 19時) (レス) id: 2b8ccb9b49 (このIDを非表示/違反報告)
ao.ao - 更新ありがとうございます！胸キュン❤️いいなぁ〰と想像膨らませて読ませて頂きました。続き早く読みたいー待ってますから〜 (2022年7月16日 1時) (レス) @page45 id: 80a471aa5a (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - ao.aoさん» コメントありがとうございます。嬉しいです(^^)今後、2人はどうなるのでしょうか。いつも読んでくださって感謝です。 (2022年7月12日 10時) (レス) @page43 id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さら | 作成日時：2021年5月15日 11時
