このままここに(side N) ページ6
突っ走り過ぎだ。
もう少し落ち着け。
みおの気持ちを無視して、1人でしゃべり過ぎだろ。
『西島君の気持ちは、わかったよ。すごく、伝わったから、だからもう、手を離してほしい…』
いまだに俺が離せないでいる、彼女の左手。
そこに視線をやりながらみおは言った。
「もう少しだけ。まだ、伝えたいことがある。聞きたいことも…」
まだ、離したくないんだ。
「あの時、あんな歌い方をして、本当にごめん」
あの時の自分の態度をとても後悔してる。
あんなこと、みおは孤独で辛かったはずだ。拒絶されたと感じて当然だし、みおの気持ちを考えたら、あの言葉も当然だ。
“西島君とは歌いたくない”
思い出すだけで、俺の胸はズキンと痛む。
痛くて苦しい。
でも、みおはもっと痛くて苦しくて、泣くほど悲しかったんだ。
顔を上げて確認すれば、彼女も苦しそうに俺を見ていた。
その瞳には、涙が溜まってる。
こんな顔、させたくなかったよ。
本当にごめん。
「もう、嫌になった? 俺と歌うの」
声が震える。
こんなこと、想像したくもない。
でも、みおがもう嫌なら、俺は受け入れる。
彼女の瞳からとうとう涙がこぼれ、みおは小さく首を横に振りながら、涙を拭った。
「みお、ごめんな」
さらに大きく首を振る彼女に、確かめずにはいられない。
「また…、また俺と歌ってくれる? 一緒に」
『…歌いたい。ずっと西島君に会いたくて、一緒に歌いたいって思ってた。いつでもそう思ってるよ』
みおは肩を震わせながら何度も頷いた。
「ん…そっか。うん、よかった」
鼻の奥がツンとして、目頭が熱くなる。
俺の視界があっという間に滲んでいく。
『私こわかった。もう歌うのやめようって言われちゃうかもって思ってた』
「そんなこと、言うわけない」
それくらい、不安にさせたんだ。
そう思ったら、胸がえぐられるように痛くて。
今度は俺が大きく首を横に振って答えた。
『西島君ごめんね。歌いたくないなんて…』
「もう、いいから…」
湧き上がる感情をこれ以上言葉にはできない。
抱きしめたい。
繋いでいた手を引いて彼女を抱き寄せると、みおは、素直に体を預けてくれた。
このままここにいてほしい。
俺の腕の中に。
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さら(プロフ) - 恋葉さん» コメントをありがとうございます。完全自己満な作品に感想をもらえて嬉しいです。その曲知らなかったので聴いてみました。いかようにも解釈できる、想像膨らむ歌詞ですね。好きなシーンを伝えてもらえて最高にハッピーです。読んでくれて感謝です。 (2020年4月24日 3時) (レス) id: 9f1002156f (このIDを非表示/違反報告)
恋葉 - 楽しませていただいております!!!個人的には7ページのチョコレートの話、Da-iCEのチョコレートシンパシーに似ててすっごい好きです(*´∇`*) (2020年4月23日 19時) (レス) id: 35a567dc92 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - てんさん» コメントをありがとうございます。楽しみにしてもらえるって嬉しいですね。これからもニッシーの恋の行方を見守って下さい。 (2019年5月9日 1時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
てん - いつも楽しみにしてます!この物語のにっしーが好きすぎます(*´ω`*) (2019年5月8日 11時) (レス) id: 3758975c70 (このIDを非表示/違反報告)
さら(プロフ) - 憂さん» コメントをありがとうございます。とっても励みになります。楽しんでもらえてよかったです。 (2019年4月25日 3時) (レス) id: 012c2a9612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さら | 作成日時:2019年4月17日 4時