君と 3

もっと、もっと ページ28

『みお、泣いてる？』



西島君が腕をゆるめ離れようとするから、私は彼の胸に顔を埋めてそれを拒んだ。



『顔上げて、みお』



「いや…」



『みお、お願い』



掠れた声。
胸が疼いて、苦しくて、彼のお願いをこれ以上拒むことができない。



ゆっくりと顔を上げると、あったかい眼差しで微笑む彼。



『泣いてる理由、教えて？』



「わからないよ」



『わからないの？』



「…」



『そっか。じゃぁ泣き止むまでこうしてる』



西島君は私の頬をつたう涙を指先でそっと拭い、再び私を腕の中に包んでくれた。



胸がきゅっと苦しくて、痛い。



涙の理由は、わかってる。



今日だけ。
今だけだから。



私は西島君の背中にまわした腕に力を込めた。



『みお』



耳元で再び名前を囁かれ、今度は体の中心が疼く。



ねぇ、お願い。



「もっと」



『ん？』



「もっと呼んで、みおって…」



恥ずかしい。
こんなお願い、初めてしたの。



きいてくれる？



『ははっ、おねだりだ。かーわい』



「笑わないで…」



『…………みお』



「はい…」



『みお』



「もっと」



切なく掠れていく、西島君の声。
彼に名前を呼ばれる度に、涙が頬をつたう。



胸が痛くて、



痛くて、苦しい。



『みお』



私の涙を拭う様に、西島君は何度も目尻にキスをしてくれた。



そして彼が私の肩を抱いてそっと離れると、私達の間にほんの少しの隙間。



それがこんなに寂しいなんて…



見上げると、彼の瞳が揺らいでる。
西島君も、同じ気持ちなの？



頬に添えられる、彼の熱い左手。
彼の右手は逃げ道を塞ぐように、私の腰を強く抱いている。



高鳴る鼓動。



「西島君…」



『涙、止まった？』



「ん…」



『そっか、よかった』



至近距離で甘く見つめられて、もう溶けてしまいそう。



あ、耳、触ってる…



私の右耳をじっくりと撫でる西島君。
熱を帯びた瞳で。



あまりにも気持ち良くて、目を閉じて彼の仕草に身を任せた。



『みお…』



目を開けると、少しずつ近づいてくる彼の瞳。



1度私の口元に視線を移し、再び私の瞳をうっとりと見つめる西島君。



左手を私の首筋にあてがった。



『みお、好きだよ』



甘い囁きを合図に目を閉じれば、



そっと、



唇が重なった。

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