君と 3

嬉しい言葉 ページ23

披露宴が始まり、もうすぐ私と西島君のサプライズの余興の時間。
今はゲスト用の待合室で待機中。



『みお？大丈夫？…じゃないな』



「どうしよう…緊張のピーク…」



さっきまで平気だったのに、式場のスタッフの方に準備を促されたら、一気に緊張が私を襲った。



『みお、聞いて。俺も緊張してる。ほら、手汗すごいでしょ』



「うわぁ本当だ。これっ、これで拭いて」



すっごい汗。
大丈夫？



ティッシュを4、5枚取って、西島君の手のひらを拭いた。



『みおに拭いてもらっちゃった。汗っかきでよかった〜』



「はいはい、アホなこと言ってないで自分で拭きなよ。おでこもすごいよ？」



『拭いてくれないの？』



「自分でやって」



ティッシュをボックスごと渡したら、なーんだつまんないの、だって。
本当に緊張してるの？
おかげで私はリラックスできたけど。



『みおはたくさん練習したからね。大丈夫だよ』



額の汗を拭きながら、西島君が言った。



そう、たくさん練習した。
この前だって、西島君と良い練習ができた。



「うん、ありがと。それに、西島君がいるもんね。だから大丈夫だよね」



いつもの彼の魔法の言葉を、今日は私から言ってみた。
自分自身に言い聞かせるように。



西島君はクシャっと笑って、私の頭をポンっと撫でた。



もう、何気ないそういうの、ドキッとするからやめてよ。



『よし、じゃぁ行くか』



西島君は私の左手を取り、そっと立たせてくれた。



右手もちょうだいって言われ、差し出された彼の左手に、右手を乗せた。



『みお、一緒に歌いたいって俺のわがままを聞いてくれてありがとう。練習を頑張ってくれてありがとう。仕事も忙しいのに、大変だっただろ？』



「そんなことないよ」



『みおと一緒に2人の結婚を祝えることが、俺は嬉しい。すごく幸せ。ありがとう。2人が喜んでくれるように、笑顔で2人の幸せを願って歌おう』



もう、だからやめてよ。
優しい瞳で、こんなにも嬉しい言葉。



『まだ早いよ、泣くのは』


「だって…西島君のせい」



『そっか、俺のせいか。じゃぁ、涙が止まるまでこうしてる』



トンっという軽い衝撃の後、耳元で感じる西島君の鼓動。
背中には彼の手の温もり。



また、境界線を超えちゃった…



今日は幸せのあまり、私の理性はどこかへ行ってしまったのかも。



私はそのまま目を閉じて、束の間の心地よさに身を委ねた。

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