君と 3

彼女の罠(side N) ページ12

なんとなく、みおは俺の告白を断ろうとしてるなって思う。



事務所に着いてから妙にさっぱりしてる。
俺から距離をとってるのもわかる。



でも、みおは嘘が下手だね。



俺の一言で潤んだ瞳を、俺が見逃すと思ってんの？
俺と目が合うと赤くなる頬に、俺が気づかないと思う？



隠しきれてないよ。
隠さないで、全部見せてよ。
戸惑い、迷い、恥じらい、揺らぎ、不安も全部。



受け止めるから。



俺がその左手を握ると、一瞬体をこわばらせたみお。
そのカオは恥ずかしさで真っ赤。



「俺とこうしてて、ドキドキする？」



強がらないで、素直に認めなよ。



さらにその真っ赤な頬に触れれば、苦しそうに下がる眉、俺から懸命にそらそうとする瞳。



あぁ、俺また突っ走ってる。
まずいって、わかってるけど…



「みお、俺を見てよ。お願い」



ちょっと罠を仕掛けてみた。
君はすぐに引っかかるから、俺の心にほんの少しの罪悪感。



でも、



罠にかかったのは俺の方だ。



ピアス？
いや、彼女の右の耳たぶに小さく見えるのは、ピアスのように小さなホクロ。



至近距離からじゃないと見つけられないくらい、小さなそれ。



俺が今、それくらい彼女の近くにいるってことを実感して、優越感に浸る。



やばい。
触りたい。



彼女の右の頬から、その色気を放つ耳へと指を這わせると、その瞳はさらに大きく揺らいだ。



たまらない。



潤んだ瞳でまっすぐに俺を見つめるみおから、目が離せない。



ねぇ、みお。
そのカオ、俺のことが好きって言ってるようにしか見えないんだけど。



このまま、俺のものにしたい。
やっぱ気持ちを伝えるだけじゃ、足りない。
全部、俺にゆだねてよ。





『西島、何してんの？』



聞き慣れた声にゆっくりと振り返れば、日高と宇野がいた。



何だよ…
いいところだったのに。



はぁ、と心の中でため息。



そして日高から2度目の問い。



『聞いてる？ 何してんの？』



「口説いてる。だから邪魔すんな」



しれっと答えてみおに視線を戻せば、もう恥ずかしさでいっぱいっていう顔。



やば。



そのかわいい顔を誰にも見せたくなくて、俺は彼女を2人から隠すように立った。

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