君と (ページ7)

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彼女の香り(side N) ページ7

「この部屋か」

佑一郎からのラインで知らされていた、カラオケ店の部屋の番号を見つけ、ドアノブに手を掛けた。

俺、息切れしてんじゃん。
かっこわり。

そう思いつつ室内へ入ると、奥の座席に座る佑一郎と香織が笑って迎え入れてくれた。

手前の座席に座っている橘さんは、振り返って俺を見たけど、まだ誰だかわかっていないみたいだ。

俺は橘さんの隣に座り、キャップとサングラスをはずして彼女のくっきりとした二重の瞳を見つめた。

明るくなった照明の下で俺を認識した橘さんは、期待通りの反応。

一瞬、忘れられてるかと思ったけど、覚えていてくれたみたいだ。
よかった。

選曲をしながら、隣に座る橘さんを盗み見た。

ショートボブ。
自然なメイク。
質の良さそうな白のカットソーにジーンズ。

いたってシンプルなファッションだけど、落ち着いた彼女の雰囲気に合っている。

それに、ゴールドのネックレスとバングルが彼女の色白の肌に良く映え、その肌の美しさを際立たせている。

真面目そうな雰囲気は昔のままだな…

佑一郎が熱唱してるところを笑顔で見ていた橘さん。
だけど、急に表情が曇った。

どうしたんだろう…
何かあった？

さり気なく様子を見ていると、橘さんは思いつめた顔をして、グラスのお酒を一気に飲み干した。

おいおいおい、大丈夫か!?

俺の視線に気がついた橘さんに、とりあえず何を飲んでいたのか確認。

「何飲んでたの？」

佑一郎が熱唱する声で、彼女は俺の声が聞こえなかったようだ。

もう1度質問しようと体を橘さんに寄せると、ふわぁっと、彼女の香りが俺の鼻腔をくすぐった。

香水かな。

この香り、好きだな。

柑橘系の爽やかな香り。
甘すぎず、主張しすぎない香りが、すっげぇ好み。

そんなことを思った。