香織の涙 ページ46
リビングへ戻り、2人並んでソファに座って香織にこれまでのことを話した。
原田主任が婚約したあとも関係を続けていたこと。
罪悪感から、香織を避けていたこと。
先週、西島君と会って話をして、主任と終わりにする決心をしたこと。
「香織、本当にごめん。私自分勝手だった。
避けて、傷つけて」
『もういいって。つらかったけど、こうやって今は話してくれたし』
香織は私の目を見て、にこっと笑った。
「ありがと…」
『彼とは?』
「この前、月曜に言った。もうやめましょうって。これ以上続けたら、2番目以上を求めてしまうって伝えたよ…」
香織は何も言わずに私の右手を握った。
「そしたら…“わかった、じゃぁやめよう”って…それだけ」
思い出すのが苦しいけれど、香織には聞いてほしい。
香織の頬を涙つたって、落ちていく。
『みお、どうしてそんなに冷静に話すの? そんなひどいこと…』
とうとう香織は泣き出してしまった。
「ひどいことをしていたのは私。婚約者の気持ちを考えたら、私が泣くのはちがう」
『みお…』
「西島君がね、背中を押してくれたの。“大丈夫、1人じゃないよ” って。
勇気をくれた、なりたい自分になるための」
『ニッシーが…』
「好きっていう気持ちだけで、その一心で原田主任から離れられなかった。
でも、西島君に話を聞いてもらって気づいたの。
私にとって何よりつらいのは、香織とこのまま会えないことなんだって。
香織や、婚約者の永井さんに罪悪感を持ったまま、原田主任との関係を続けていくことは私にはできないって…
西島君が気づかせてくれた」
『みお…よしっ! 今夜は飲もう!』
「うん、お腹空いた。お鍋つくろう」
2人でお鍋の準備をしている時、香織が言った。
『ニッシーがさ、さっき教えてくれたんだ。みおが泣いてたって。それ聞いて私、何もできなかったなって…』
「香織…」
『みおは私がつらい時、いつもそばにいてくれた。私もそうしたかったのにできなくて。それが残念』
香織、そんなことないよ…
私はいつも香織に助けられてる。
『ニッシーにいいとこ持ってかれちゃったな』
香織が涙を浮かべて笑うから、私もつられて笑った。
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作者名:さら | 作成日時:2018年10月29日 0時