鬼コール ページ14
部屋のドアを開けるなり、私を抱き寄せて唇を重ねる原田主任。
「んっ」
私が声を漏らすとさらにキスは深くなる。
私は彼の首に腕をまわして、それに応えた。
もう余計なことは考えたくない。
この時間だけは、彼を感じていたい。
その一心で体を重ねた。
『何か飲む?』
「水がいいです」
私が答えると、ミネラルウォーターのボトルを手渡してくれた原田主任。
そして、私のおでこにキスをしてバスルームへ向かった。
こんな、恋人にするみたいな仕草…
ずるい。
視界が滲む。
たったこれだけのことがうれしくて、苦しい。
こうしてまた、彼から離れられなくなる。
私のスマホの着信を告げる音。
画面には“西島隆弘”の文字。
今はでられません。
ごめん、西島君。
そう思っているのに、鳴り止まない着信音。
急用?
でた方がいいかな。
「もしもし…」
『あ、橘さん起きてたんだ』
「うん起きてたよ」
あの鬼コールじゃ、例え寝ていたとしても起きちゃうよ。
『いや、なんか、大丈夫かなって思って』
え?
何が?
西島君とどんなやり取りしてたっけ?
『あ、いや、わけわかんないよね。ごめん。
ミュージカルの曲で何が好きって話で、橘さんの好きな曲が “On my own” だったから、なんか急に心配になっちゃって。
この歌って孤独感がすごいし、物語では歌った女の子は死んじゃうよね、確か。
だからその、橘さん大丈夫? と思ってさ』
西島君が早口でしゃべってる。
要するに私を心配して電話をくれたってことかな。
「ふふっ、大丈夫だよ。西島君て想像力が豊かだね。それとも心配性?」
『おい、笑うなよ。心配して損した』
後ろからふいに、原田主任に抱きしめられた。
そして彼は私の首筋にキスをしてる。
ちょっと、
待って、主任。
まだ通話中。
「ご、めん、心配してくれてありがとう」
チュ、チュ、と原田主任はわざと音を出している。
そして、スーっと首筋を舌でなぞられた。
「んっ、はぁっ、じゃ西島君、おやすみなさい」
『…あ、』
私は西島君の返事を待たずに通話を終了させた。
と同時に私の唇をキスで塞ぐ原田主任。
深くて荒々しいそれに快感を覚える。
そしてそのまま、再び彼に溺れた。
308人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さら | 作成日時:2018年10月29日 0時