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魔法の言葉 ページ35

西島君は私の頭を優しく撫でてくれている。



それがあったかくて、さらに涙が溢れてきた。



『みおはたぶん、自分がどうすべきかわかってる。

この涙は、男を想っての涙じゃない。香織や佑一郎、そして相手の婚約者への罪悪感と、自分自身への苛立ちの涙だ』



眼鏡越しの、彼の優しい眼差しにもう涙が止まらない。



『こんなに泣くほど心が揺らいでるってことは、それが、みおが1番大事にしたい気持ちだよ』



西島君はそう言って、私の頬をつたう涙を拭ってくれた。



『みお、1年後、3年後はどうしていたい? どんな風に笑っていたい?

香織や佑一郎とどんな風に過ごしていたいか、想像してみて。

大丈夫。
つらいのはほんの一瞬で、香織と佑一郎がいれば乗り越えられる』



私の頬に手を添えて、涙を拭い続けてくれる西島君。
その手は暖かい。



『それに…、俺もいる。だから大丈夫』



そう付け加えた彼の優しい瞳。



「西島君が…」



『そう。俺がいるから、絶対に大丈夫だよ』



“大丈夫”



西島君の言葉が、魔法の言葉に聞こえる。



「ありがとう、西島君」



そう心からの気持ちを伝えたら、彼の瞳が一瞬揺らいだ。



そして、私の視界が真っ暗になった。

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作者名:さら | 作成日時:2018年10月29日 0時

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