7色の後ろ側 9《赤》

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ゆっくり流れてた時間が速度を取り戻した瞬間、一気に、回り始めた。

聞こえる悲鳴、警備員に押さえつけられて倒れてる女の人。
心臓の動きに合わせてズキンズキンと脈打つ左腕。

その左腕を直視する勇気がなくて、とりあえず後ろを振り向いたらKIKIさんが顔を真っ青にして立ちすくんでいた。


「大丈夫ですか」

K「そんな、わた、し、より...」


言葉に詰まりながら必死に音を出すKIKIさんを見て申し訳ない気持ちになる。
不思議なもので、自分より騒がしく慌て動く周りのお陰で私はいくらか冷静でいられた。


止血、しなきゃ。


本当にふわっとそう頭に浮かんで、カバンからミニタオルを取り出して腕に当てたら一瞬で赤く染まるから、いい加減私も血の気が引いた。

おそらく局の方であろう男性の方が少し長めのタオルを差し出してくれて。
腕に一周巻きつけて縛ってくれる。



とりあえず、どこかに座って

腕、心臓より高く

誰か他にタオルか何か

救急車と警察

もう呼んでます



耳に入ってくる声が誰のものかもわからない。
ただ私が歩いた跡を残すようにぽたぽた血が落ちて。

ああ、汚しちゃってるなんて申し訳ない気持ちになる。

KIKIさんを見たらマネージャーさんが駆け寄っていてちょっと安心した。
そしてその足元に落ちているのは皆に頼まれて買った品物達。

袋から見える漫画雑誌に血がついてるのが見えて。
あー、大毅に買い直さなきゃなんて思うのは、冷静なんじゃなくてもはや現実逃避の域かもしれない。

サイレンの音がだんだん近付いてくる。
なんでこんな心乱れる音なんだろう。
もっと落ち着く音楽とか明るい音楽にしたらいいのに。
ええじゃないか、とか。
その様が頭に浮かんで、私は場違いだけど少し笑ってしまった。









医「...はい、以上になります。
通いやすい病院で構わないので、毎日消毒はしてください」

「はい、ありがとうございました」


処置室を出ると待合にいたのは熊谷さんだった。
渋い顔して自分の手元をじっと見てる。


「...流石に最近マネージャー業サボりすぎじゃないですか？」

熊「...何だよ、思ったより元気そうじゃん」


皮肉を言いながら隣に座ったら、驚いた顔してこっちを見た後安心したように笑った。


熊「これから警察、行くから」

「はい」

熊「高野には自分で連絡するだろ？」

「はい」

熊「おれ支払い済ましておくから話してこい。
...って何その足。歩けんの？」


足首にも巻かれた包帯に気付いた熊谷さんが驚いた顔してこっちを見た。

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