7色の後ろ側 7《赤》

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木「いやぁ、てっきり話聞いてると思ってたよー...」

「大丈夫です。何も聞かなかった事にします。」

木「ありがと、そうして」


そんな事言いながら事務所に向かって歩く。
...けど。


「...女優さんて事は別事務所ですよね」

木「...おい(笑)」


だって、だって気になる...(笑)

木村さんはまぁ言い出したの私だし、って頭をかくと簡単に事情を教えてくれた。


熊谷さんの彼女さんは、それこそ今ではたくさんの映画やドラマの主演を務める超売れっ子女優さん。
元々駆け出しの頃、熊谷さんがマネージャーを務めていたらしい。

オーディションも落選が続いて諦めようというタイミングで朝ドラ抜擢、そこがヒットのキッカケになったそう。

その時既に交際していた2人は、スキャンダル発覚を避けるために事務所側から別れさせられた。


「え、じゃあ今は...」

木「それでもお互いを諦めきれなくて、熊谷さんは前の事務所辞めてうちにきて、表向きは別れたフリして付き合い続けてるってこと」

「きゃーっっ」


つい、小声で叫んでしまう。
そんなロマンチックな事ってない。


「すごいですね、ドラマですね」

木「とりあえず本人から聞くまでは知らないフリよ！」

「はい！」


事務所で仕事を開始してからも、やっぱり気になるのはその事で。

そっか、だから余計に人目を気にして私にも注意してくれたんだ...。



《ブーブーブーブー》



入力作業をしていたら机に置いていたスマホが揺れる。
画面には濱田崇裕の文字。


「...濱ちゃん？」


濱ちゃんから電話って初めてかもしれない。
私はスマホを手に取り廊下へ出た。

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