7色の後ろ側 7《赤》

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流星を下ろした車の中は、いつもの望と2人の時と打って変わって静かだった。


「どこか寄りますか？」

望「んー、大丈夫」

「はい」


その会話以外望の声を聞かないまま車を家に走らせた。


「...はい、到着です、お疲れ様でした。
明日は7時に美和が迎えにくるのでお願いします」

望「...」

「...望？」


望が座席にもたれたまま、長い腕をすっと伸ばす。

手をにぎにぎするもんだから、周りに誰もいないのを確認してその手を掴んだ。


望「...けど」

「ん？」

望「心からは言えへんけど」

「うん」

望「俺、好きな人の幸せを願える男になりたいから」

「うん」

望「おめでとうな」

「...ありがとう」


ぎゅっと痛いくらいに握られた手を握り返す。


「望は見た目だけじゃなくて、中身もイケメンだね」

望「しげがちょっとでもAの事傷つけたら、俺がAの事奪ったんねん」

「うん」

望「早しげAの事傷つけへんかなぁ」

「おい(笑)」

望「ほな、お疲れさん」

「お疲れ様です」


ぱっと手を離して足早にエントランスへ続く階段へ消える望を見送る。

...私前世でどれだけ徳を積んだんだろう。

現実離れした日々を改めて思い返してそんな事を思って、自宅へ向かった。



「ただいまー」


一人暮らしでもちろん返事はないんだけど。


「しげおー、お留守番ご苦労様」


しげがくれたアイビーに声をかけて葉先をつつく。
はい。彼の名前はしげおくんに決定しました。

付き合う前からしげの物自体は少しばかり部屋にあった訳だけど。

彼が私に選んだものっていうのはマニキュアとこの子が初めてで。
やっぱりそれだけ特別に感じるものがある。


久しぶりにお酒飲もう。
ハイボールを取り出しながらスマホを見ると、美和からの業務連絡と、仕事後の癖にもりあがるメンバーのグループメールと。

しげから個別で届いていたメッセージ。


重『家着いた。お前も着いたら連絡入れろや』


ぶっきらぼうな文章だけど、こんなやりとりも私達の関係の変化を感じさせる。
今までこんなやりとり、してこなかった。


『ただいま』


そう送った直後に既読がついて、


重『おかえり』


この文章で胸が一杯になる辺り、私もまだまだ可愛い所残ってるのかも。


重『俺らの事ちゃんと話せってグループめっちゃ盛り上がってんねんけど。
タイミング見て飲み会やって。ダルいわー』


まぁ、あの説明だけじゃ納得もできないよね...。
私はお酒を飲みながらスケジュールの確認をした。

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