7色の後ろ側 5《赤》

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side 重岡

そんな訳で滝にきたわけですけども。


重A「「暗ー...」」


ガランとした駐車場には車の一台も止まっとらんくて、昼間は開いているであろう屋台もぜんぶ畳まれとる。

入口っぽい所はとくに封鎖されてへんみたいやけど、街灯も最低限の数って感じでほんま暗い。
山道の途中なんてこんなもんやんな。


ま、せっかく来たんやし。


重「行くか」

「...え？本気で言ってる？」

重「おん」


Aは駐車場の重々しい雰囲気でだいぶテンション下がっとるらしい。
ほーん。意外とビビりやねんな。


重「とりあえず入口の方まで行ってみようや」

「うん...」


車から降りてるとAが俺のきもち後ろをついてくる。

2人揃って入口を覗いたけどほんまに暗い。
ちょっと坂道になってて、たぶんやけどそっから滝まで続く階段がある。

虫やら鳥の鳴き声も聞こえんと、滝のザーザー流れる音だけが聞こえてくる。


スマホのライトつけて歩き出したタイミングでくいっと服を引っ張られた。

振り返ったらすぐ後ろを歩いてたAが申し訳なさそうに俺の服の裾を摘んどる。


重「何やねん」

「もう良くない？これ入っちゃダメなやつじゃない？街灯ほぼないじゃん」

重「閉まってないし大丈夫やろ。施設とかとちゃうから営業時間とかもないし」


そう言って歩き出そうとしたらまた服をひっぱられる。


重「...なんやねん(笑)」

「あのね、正直に言います。怖いです」

重「ほんなら俺ぱっと一人で見てくるから車で待っとけや」

「無理無理、それも怖い。昼間出直そうよ」

重「そんなん人多くて見られへんやん」

「それは、そう、たけど...」


納得しつつもやっぱり怖いのは変わらんのやろ、えらい難しい顔しとる。
...しゃあないなぁ。


重「ん」

「...何」

重「手、繋いだるから」

「え」


Aに向かって手ぇ差し出す。
今度はキョトンてアホみたいな面しよって固まった。
お前なんやねん、こっちやって今くそ恥ずかしいねんぞ。


重「もうええ。行くでー」

「わ、待って、ちょっと」


A背中向けて滝に向かって歩き出す。
行き場をなくした手をポケットに突っ込もうとしたらAの手に邪魔された。

控えめに俺の手を掴んどって、もどかしくてしっかり握り直すと俺に合わせて握り返してきた。


手、ちっさいな。


ちらっと顔見たけどAの奴下向いとって、怖いからなのか恥ずかしいからなのか俺には判断できひんかった。

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