7色の後ろ側 5《赤》

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重「...そんなに俺の事好きなん？」


心臓が止まるかと思った。
いやたぶん止まった。一瞬。

寝言で名前言うって。
何それ？私何者？そんなん少女漫画以外で起こり得るの？

寝言発言の時点で赤くなっていた顔が更に熱を帯びていく。

どうしよう。どうしよう。どうしよう。


自分の気持ちだって、そんな確たるものは正直ない。
けどしげにそう思われるだけの事をしてしまった訳で。
それでいてしげはそういう気持ちは一切ないどころか嫌悪を抱くくらいな訳で。
この赤い顔で好意を否定しても、きっと信じてはくれない。
仕事を一緒にする事自体、拒否されるかも。
そしたらもう皆と過ごすことすらできなくなる。

必死に頭を動かそうとしても、まともに考えられるはずなくて。
やばい、目頭まで熱くなってきた。


重「うそやって(笑)」


その一言で、私の涙腺は見事に崩壊した。

何もなかったという安心感と、しげは何でそんな事言ったのっていう怒りと、それでもそんな嘘が出てくる位には気持ちがバレているのかもという恐怖と。

高ぶった感情が涙に変わって溢れ出す。

情けない。こんな歳して、嘘つかれて泣くなんて。
ああ、しげもこれ、絶対引いてるよ...。

なかなか止まらない涙を止めてくれたのは、しげなりのぶっきらぼうな優しさで。
睫毛をぐーっと引っ張られたら引き換えるように涙がひっこんだ。



洗濯カゴを抱えて歩くしげの後ろをついていく。

気を遣わせてしまっている事がわかるから、なるべくいつもの様にしないと。

まだ目を見るのが気まずくて、顔を合わせずに謝罪した。

しげも悪ふざけをしすぎたと思ったらしくて、柄にもなく謝ってくれる。

その雰囲気に便乗して、ふざけて、いつもみたいに。
しげがこれ以上変に気を遣わないように。


重「...これ俺のパンツやんけ！」


そう言って笑うしげを見て、上手くいったとこっそり安心した。

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